何かを始めるのに遅すぎることはないんですね


——『ゆりあ先生の赤い糸』の原作漫画は今年の「第27回手塚治虫文化賞」で頂点となる「マンガ大賞」に輝いた話題作です。菅野さんはどんな部分に魅力を感じましたか?

菅野美穂さん(以下、菅野):まずヒロインの伊沢ゆりあさんは50歳の女性で、私と年齢も近く共感しやすい設定でした。でも物語のなかで起きる出来事にエッジが立っていて、旦那さんが突然倒れてしまっただけでなく、そこに浮気相手として“彼氏”が現れるんです。さらに旦那さんの“彼女”を名乗る子連れの女性も出てきて、どんどん話がこじれていくのですが、ゆりあさんは彼らと同居するという選択をするんです。ぶっ飛んだ展開ですが、原作漫画で描かれている感情の機微がリアルで、ゆりあさんの選択に納得して応援したくなってしまうんです。

トップス¥28600/ディアルテ、スカート¥24200/イエナ(メゾン イエナ) イヤーカフ(左耳)¥73700、(右耳)¥16500、リング¥35200/ジョージ ジェンセン(ジョージ ジェンセン ジャパン) シューズ¥58300/レペット(ルック ブティック事業部)

——菅野さんと同世代の女性にとって、いずれ訪れるかもしれない親やパートナーの介護は悩ましい問題です。でも、ゆりあは座右の銘である「カッコよく生きる」を体現する生き様を見せてくれますよね。

菅野:本当に同性から見てもカッコイイ女性で、原作に比べると私は身長が足りないし、普段は堂々としたキャラクターではないのですが、そこは意識的に演技でカバーしていきたいなと。私としては、今回のドラマは同世代の方々はもちろん若い方たちにも見てもらいたいと思っていて。多様なジェンダーを認め合うことが当たり前で、お互いに認め合いながら協力して生きていく姿を見てもらって何かを感じ取ってもらえたら嬉しいです。

 

——役作りの一環でゆりあが慣れ親しんだバレエや刺繍に励んでいるそうですが、今の上達具合を教えてください。

菅野:刺繍は初心者でしたが、やってみると楽しくて。もちろん先生のお手本と比べると私のレベルはヒドいものですが、諦めずに最後までやると、ちゃんと手仕事の味がある作品になるんですよね。そこは人生と同じなのかもしれないと思いました。途中で無理だと思っても、つながった縁を大切にするべきで、自分から糸を切らないほうがいい。そんなことを学んでいる気がします。

 

菅野:バレエは本当に大変で、役作りだからといって簡単にトウシューズを履かせていただけるような甘い世界ではないです。バレエのシーンはドラマの後半に描かれる予定なので、そこに向けて準備をしているところです。レッスンは大変ですが、生徒の方々は私よりも歳上の女性が多く、初心者の人もいるので、お稽古をしていると前向きな気分になれるんですよ。やっぱり人生で何かを始めるのに遅すぎることはないんですね。