——いろいろな体験や刺激を、と言われたそうですが、具体的にはどのようなことをされましたか?
いろいろな経験や刺激を与えられそうな場所を必死に探しました。モンテッソーリのプリスクールやシュタイナーのプリスクール、インターナショナルプリスクールなど、連れていきましたね。でも、どこも断られました……。
初日に付き添った教室で娘が容器に入った小さな玉を床にまき散らす様子に、「ちょっと無理!」とスタッフが叫び、そのまま母子で帰宅したこともありました。ほかの子どもは小さなシャベルですくって、別の容器に移し替えて遊んでいたのですが……。
——娘さんは初めて経験することや、イレギュラーなことがとても苦手なんですよね?
はい。今考えると、あちこち連れて回ったことは、初めての場所が人一倍苦手な娘にとってはさぞかし苦痛だったことだろうと思います。でも当時はとにかく必死でした。
児童館にも連れて行きましたが、おままごとやおもちゃに一切興味を示しませんでした。でも唯一、青山にあった「こどもの城」(東京都渋谷区・2015年閉館)の音楽演奏だけは大好きで、体を揺らして踊っていました。特に『ぼよよん行進曲』(作詞・中西圭三、田角有里/作曲・中西圭三)は今でも大好きです。
♪どんなたいへんなことがおきたって
きみのあしのそのしたには
とてもとてもじょうぶな「ばね」がついているんだぜ〜♪
お兄さん、お姉さんが強い足取りで行進しながらジャンプすると、娘も腕をぐるぐる回しています。ですが、ふと周りを見回すと、娘は何かがほかの子たちと違っていました。みんなじっと座ってよく聴いているのです。立ち上がって、体を揺らしているのは娘ぐらいでした。
私は、食べ物のかじり取りがうまくできずに口に詰め込んで嘔吐しやすい娘が安全に食べられる小さなサンドイッチを買っては、こどもの城に通い詰めました。今でも『ぼよよん行進曲』を聴くと、娘のことを励ましてくれているようで、涙ぐんでしまいます。
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