埼玉県議会の県議団が、現実とあまりにもかけ離れた子どもの放置を禁止する条例案を議会に提出していた問題で、県議団は最終的に取り下げを表明しました。ひとまず、この条例が可決されることはなくなりましたが、一連の騒動は日本社会の歪んだ一面をあらためて示す形になってしまいました。

埼玉県議会の自民党県議団は子どもの放置を禁止する条例案を議会に提出し、2023年10月13日の本会議で可決の見通しとなっていました。しかし、その内容がメディアで報じられると世の中は大騒ぎとなり、県議団は10日、取り下げを表明しました。

可決される予定だった条例案の中身は、驚くべきものです。

条例案は、小学校3年生以下の子どもを放置することを「虐待」であるとし、一連の行為を禁止するという趣旨です。親が自分の趣味などのために、自宅や車内に子どもを放置してしまうケースが後を絶たないことを考えると、放置を禁止すること自体に反対する人はほぼ皆無でしょう。しかし、今回の条例案はそのようなものではありませんでした。

子どもに家で留守番させることも放置に該当し、留守番の定義は、親がゴミ出しをするために外に出ることや、100メートル先の回覧板を届けるための外出も該当します。また子どもだけで公園で遊ばせたり、登下校させることや、お使いに行かせることも、やはり放置=虐待に当てはまります。

写真:Shutterstock

18歳未満の兄弟に子どもを預けることも放置に該当するということで、高校生になった兄や姉が弟や妹の面倒をみることもできません。マンションで隣の家に回覧板を届けに行くことはグレーゾーンという認識とのことですが、基本的には放置という位置付けです。

 

上記を聞いただけでも、現実的にあり得ないと思う人が大半だと思いますが、問題はそれだけにとどまりません。

 
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