そもそも今回のグウィネスの法廷ファッションは、控えめで好感度をもたれつつ、「私のような裕福で育ちのいいマダムが、スキー場で人をひき逃げするような人間に見えまして?」と陪審員や裁判長にアピールするためのもの。
だからこそ、リッチ層のアイコンのような「ザ・ロウ」などのブランドを纏い、エルメスのバーキンのような派手なブランドバッグは、あえて身に付けなかったのです。結果的にグウィネスの無罪が認められ、裁判には勝訴。彼女のファッション戦略は見事としか言いようがありません。しかも法廷ではちゃっかり自身のアパレルブランド「G.label」のアイテムも着用し、いい宣伝にもなったのですから。
そもそもクワイエット・ラグジュアリーがブームになった背景には、「新型コロナによるパンデミック」「サステナブルへの意識の高まり」「経済的不況」の3つの要因があります。
ステイホームで人々の内省が深まり、社交のためではなく自分のために着心地のいい服を好むようになったこと。環境保護の観点から、長く着られるだけでなく、富裕層の人たちは服を素材の産地や製造過程から選ぶようになったこと。そして不況のたびにミニマルなスタイルが流行る傾向がありますが、それは富裕層にとっては、自分が裕福だということを声高に叫びたいタイミングではないということ。
その結果、経済的に余裕のある人たちは素材や仕立ての良さにお金をかけることで自分たちを差別化するようになった。彼らのスタイルは「わかる人にはわかる」暗号のようなものなのです。
というわけで、クワイエット・ラグジュアリーを楽しむには審美眼と経験値が必要。ファッションの経験を積んできた、私たちミドル世代にぴったりのトレンドとも言えるかもしれません。
ここへきて、これまでセリーヌやクロエを手がけたデザイナーのフィービー・ファイロが、自身のブランドを今年9月にローンチすると発表し、さらに女優のアンジェリーナ・ジョリーは、テイラーリングにこだわったブランド「アトリエ・ジョリー」をスタート。上質さを極めるクワイエット・ラグジュアリーのブームは、来季も継続しそうな気配です。
前回記事「結婚24周年のベッカム夫妻が乗り越えた、過去の「不倫疑惑」とそのお相手とは」はこちら>>
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