先日、〔ミモレ編集室〕にて杉山崇先生と咲子編集長のトークセッション『アイデンティティの混乱と、「人生の物語を整えること」とは?』が開催されました!
杉山先生への質問とお悩み相談コーナーもあり、終始穏やかながらも学びが濃い時間となりました。
そもそもミドルエイジとは?
「改めて、ミドルエイジってどんな世代のことを言うのでしょうか?」という咲子編集長からの質問からスタート。
これまで仕事や家庭においてさまざまな役割で物語を紡ぎ、居場所を見つけてきた大人たちが「このあと、どうしよう? もしかして、他の道もあったりするんじゃないか?」と悩み出す時期こそミドルエイジだそうです。
この悩みからくるアイデンティティの混乱を、私たちは一体どう乗り越えるべきなのでしょうか? 杉山先生は「人は悩むもの。混乱さえも楽しんじゃえばいいのでは?」と。
悩みの渦中にいる時って苦しいし辛いのに、一体どう楽しめばいいの!? と、編集室のメンバーもザワザワ(笑)。
今回のイベントのために〔ミモレ編集室〕のメンバーから杉山先生への質問を募集しました。今まさに悩んでいる3人が杉山先生にお悩みを相談し、メンバーのmacoさんが取材者としてイベントを進行しました。
自分と組織の物語を繋げていくこと
まず1つ目のご相談は、現在転職活動中のMさんからです。次の仕事を探す上で、自分がやりたいことではなく、できることを優先すべきかを悩んでいるとのことでした。
Mさんとしては、「経験はないがご自身がやってみたかったことを仕事にしたい」という思いがあり、転職エージェントを利用して応募をスタートしているそうです。でもなかなか上手くいかない状況が続いている状況。やはり経験を活かせる仕事や会社に挑戦した方がいいのだろうか? というMさんに対して、杉山先生は「Mさんには自分に経験がないことに挑戦したいという叶えたい物語があるが、企業にも企業にとっての叶えたい物語があるので、その企業が持つ物語に共感できるかどうかをポイントにしてみるのはどうか」と言うアドバイスがありました。
「自分のできることを、共感できる組織の中でどう活かせるのかを考えることで、どんどんできることが広がり、『好きなこと』になる」と。自分にはない視点をもらえた! とMさんも前向きな気持ちになれたようです。
2つ目は、家業の手伝いをしている海外在住の文月さんからのご相談。自営業やボランティア活動ではなく、お給料をもらうことで精神的な自立ができるのではないかと思い現在就職活動を行なっているが、現状はなかなか就職活動がうまくいっていないとのことです。自分の物語が停滞しているように感じており、このまま続けていっても良いのかどうか悩んでいるそうです。
先生からは、「うまくいかないと自信がなくなってしまうが、そう思うにはまだ早い。文月さんの中で燻っている物語は、企業に勤めてお給料をもらうことなのではないか。」との指摘がありました。他人から評価される機会が会社員と比べて少なく、「自己価値」を実感しにくい部分のある自営業。今まで自身の職業キャリアにおいてなかなか自分の価値を見出せずにいた文月さんですが、先生からの指摘を受けて自分にはやり残した物語があったことに気付かされたようです。その物語とは、今までに経験のないどこかの会社に勤める「職業人」としてのキャリアを積むことでした。その上で「文月さんの物語と組織の物語をどう繋げていくかがテーマになるので、これからも縁のある出会いを探してほしい」と杉山先生からのアドバイスがありました。
うまくいかないことに悶々とした思いを抱えていた文月さん。自分の物語ばかりを押し付け、組織側の物語を無視してしまっていたことに気が付けて良かったとのことでした、今後は自分の経験やスキルを持って、相手の物語に入っていけるかを意識したいと前向きに捉えられていました。
「不安」が「不安」を呼び寄せる?
最後は「団塊ジュニア世代が、これからの時代を生き抜くために取得すべき資格やメンタルの保ち方」について、フクムラさんからのご相談です。
厳しい時代の波が来ているように感じる昨今、国からも団塊ジュニア向けの施策が実施されているように思えずさらに不安を覚えてしまい、「資格取得をするなど、生き抜くために何かする必要があるのではないか?」と考えるフクムラさんに対して杉山先生は、資格を取得することで時代の波に乗り遅れないようにすることを考えようとする姿勢を肯定されていました。ですが、それ以上に大切なのは資格を通してできることで自分が喜びを感じられるかどうか。加えて、時代の波に合わせて、進むべき業界を考えることも大切だと言うことも教えていただきました。
先生ご自身も心理学を生業にしようと思ったきっかけは今後の時代の流れを読み、波に乗った結果だったそうです。とはいえ大きな波がくる業界であったとしても、急激に縮小していくことも無きにしもあらずのため、「たとえ小さな波しか起きない業界であったとしても、自分らしさを実感できる仕事なのであれば良いはずだ。」ともおっしゃっていました。
「どこかで時代のせいにしていたかもしれない」とおっしゃるフクムラさんの感想が印象的でした。
キャリアとは自分を誇りに思うためのもの
「自分なりにやれた」と思える納得度がなければ、どんなキャリアにも満足できず他の物語を追い続けてしまうと言う構造がわかりました。自分で自分を誇りに思えないと、意味がないのです。
取材者のmacoさんからも「事前に質問を見ながら答えをイメージしていたが、予想を遥かに越えた内容だった」とあったように、先生のアドバイスには目から鱗の連続でした。柔らかくて温かい先生の言葉はスーッと心に馴染んでいき、また「自分が向かいたい方を向く」という本質的なお話に昇華される流れに、macoさんも視界が開けたとのことでした。
イベントが終わる頃には、全然時間が足りない! と皆さんもまだまだ話し足りなかった様子(笑)。今後も杉山先生の連載が楽しみです。杉山先生、ありがとうございました!
文/れいな
取材協力 /文月・フクムラ
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