今日は皆さんに『隣人X -疑惑の彼女-』という映画をご紹介したいと思います。物語は故郷を失った惑星難民「X」が政府承認で地球に住んでいる、そして誰が「X」かわからない、あなたの隣人も「X」かもしれない⋯⋯という事実が明らかになったところから始まります。そして、主人公の林遣都演じる雑誌ライターの笹憲太郎が「誰がXか?」というスクープを求めて、上野樹里演じる柏木良子に近づきます。「柏木良子はXかもしれない」という疑惑から始まった二人の関係はどのような顛末を迎えるのでしょうか?

【隣人X -疑惑の彼女-】話題の映画を心理学の専門家が解説!「本を愛するというキャリア」を選んだ女性の魅力とは?_img0
映画『隣人X -疑惑の彼女-』 12月1日(金)新宿ピカデリー 他全国ロードショー/出演:上野樹里、林 遣都、黃 姵嘉、野村周平ほか/監督・脚本・編集:熊澤尚人/原作:パリュスあや子「隣人X」(講談社文庫)/配給:ハピネットファントム・スタジオ ©2023 映画「隣人X 疑惑の彼女」製作委員会 ©パリュスあや子/講談社

気になりますよね。非常に興味深い映画ですので、よかったらぜひご覧ください。なお、原作はmi-molletでもすでに紹介されていますので、良かったらこちらの記事も御覧ください。私たちの生き方、在り方を考えるヒントが満載の映画になっています。

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今回は映画をより深く愉しんでいただくために、上野樹里さん演じる主人公、柏木良子という物語を掘り下げてみたいと思います。最後までどうぞお付き合いください。

 

「柏木良子」とは?


柏木良子36歳は、地方都市出身ですが、今は都内に一人で住んでいる独身女性です。朝はコンビニのバイト、午後は宝くじ売り場の売り子のバイト……というバイトとしての「職業キャリア」を積み重ねています。

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©2023 映画「隣人X 疑惑の彼女」製作委員会 ©パリュスあや子/講談社

ただ、彼女の本当に重要なキャリアは他のところにあるようです。それは「本とともに生きる日々を愛する」というキャリアです。図書館に通い、図書館で借りた本をじっくりと読むのが彼女の愛する日々です。

彼女の日々はほぼ完全に彼女だけのもの……。バイトがどの程度の収入になっているのか、生計は大丈夫か、などはよくわかりませんが、食事も下ごしらえから自分で作り、誰にも邪魔されず、自分だけの今の暮らしを心から愉しんでいます。

そして、この暮らしは単に人生を消費しているわけではありません。映画の中ではメインとしては扱われてはいませんが、随所に彼女の中に読書を通して積み上げられた知性や感性が溢れ出しています。
そう、彼女の中には確かに彼女の価値観に基づく、彼女なりのキャリアが形作られているのです。そして、彼女はそのキャリアにとても満足しているのです。

何と素晴らしい……!!
この生き様だけでもかなり素敵ですよね。いわゆる華々しいキャリアでは全くありません。しかし、彼女は彼女なりの価値観で、充実した日々を積み重ねているのです。

一流大学、一流企業、はキャリアではない!?


では、この素敵な生き様の背景には何があるのでしょうか? 映画の中では柏木良子のこれ以前のキャリアにも触れられています。
それによると、柏木良子は一流国立大学の出身です。そして卒業後、一時は一流企業にも勤めていました。そのようなキャリアを経ての、今の暮らし……。

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©2023 映画「隣人X 疑惑の彼女」製作委員会 ©パリュスあや子/講談社

ここからは私の想像になりますが、きっとこれまでのキャリアの中に今のキャリアを選ばせるなにかがあったのでしょうね。「俺が! 俺が!」という優秀な方が集まりがちな一流大学の学生時代、そして「成果を!! 結果を!! 数字を!!」と社の内外の競争に晒される一流企業時代……。その中で、柏木良子は何を思ったのでしょうか?きっと彼女の価値観を確認させるような何かがあったのでしょうね。

そんな彼女が、「物語の十二単」とも言えるような物語の化学反応に巻き込まれたら、何が起こるのでしょうか? この答えは、ぜひ映画をご覧いただいて、あなたの感性で味わってみてください。

「柏木良子」に学ぼう!


最後に、心理学者としての私から見た柏木良子の魅力を語らせてください。彼女はとても人と人の感性に興味ある一方で、自分自身が、ワイワイ、キャピキャピ、グイグイ、など活発に人と関わるのは苦手です。でも、警戒心が強いわけではなく、人に対する好奇心は旺盛です。本を通して人に触れる、コンビニという現代の社会インフラを通して人に触れ、そして宝くじの販売ボックスという「コンテナ」を通して人の実態を垣間見る⋯⋯。私は、柏木良子の感性の満たし方にとても感銘を受けました。同じことはできないけど、私自身もこのように生きられたらと思います。

さあ、柏木良子の生き方を参考に、あなたの物語を見つめ直してみましょう。そして、あなたの物語を整えましょう。あなたの物語は、いつでもあなたのためにあるのです。

文/杉山崇
 

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