「社員に月給払って、わしの手元に残るの10万かいな……」と呆然とした経営者が、人件費をどうにか経費にする方法を考えるのは当然のこと。
解決策はあるんですよ。「正規雇用」から「非正規雇用」にすればいいんです。正社員をフリーランスや派遣社員に切り替えれば、それは「外注」ということで、人件費はステルス的に経費になるわけです。正規雇用でなければ社会保障費も払わなくていいし、会社としては一石二鳥。
ちなみに消費税の導入は1989年で、日本企業における非正規雇用が2割を超えたのが1990年。その割合は翌年のバブル崩壊を経て現在に至るまで右肩上がりで増えているわけですから、両者は無関係ではありません。ちなみにその頃、企業が非正規を増やしていった理由は人件費を抑えるためで、日本の平均年収はこの30年、金額ベースでほぼ横ばい。見事なまでに功を奏しています。日本における消費税は、非正規化を促進させ、その結果としての人件費の抑制と貧困まで引き起こしてきたと言ってもいいと思います。
はっきりいって今の不景気、国民が苦境を乗り越えるためには、消費税を一時的にでもなくせばいいんです。政治家や評論家の中には「消費税をなくしたら買い控えが起きる」とか言ってる人がいますが、そういう方はご自身で買い物をしたことがないんでは? それとも「アホな戯言も、もっともらしい顔で自信満々に言ってるうちにホントになる」とでも思ってるんでしょうか。
全部は難しいというなら、軽減税率の8%、つまり日常生活の必需品だけでもなしにすればいいのでは? だって消費税の税率を上げるときは「今日から上がります!」というだけで導入されているんですから、下げるのだって同じようにできるのでは? でもそれをやるとインボイス導入の言い訳がなくなっちゃうってことかな? それとも現金給付にしないと、「中抜き」の旨味がないからってことでしょうか? そもそも選挙をチラつかせながら行われる現金給付は、政権与党だけに可能な、税金を使った「体のいい賄賂」のように見えてしまうのは私だけでしょうか?
正直、最近の日本は最悪です――このコラムでもこの言葉を何度書いたかわからないんですが、コロナ以降は「前よりちょっとマシになったかも」と思える瞬間は一度も来ていません。
こういうときは、ある意味では最も危ない瞬間とも言えます。目を閉じ耳をふさいで、個人の生活を守り、個人の喜びに埋没したくなってしまうからです。そんなときに私は再び『カムイ伝』を思い出します。自分たちが食べる最後の米さえ奪われた農民たちに許されるのは、計量の枡からこぼれ落ちた米粒を拾い集めることだけでした。
そんな理不尽さえ「決まりだから」と飲み込むことしかできないんでしょうか。いやいや、きっとなにかあるはず。この30年の教訓は「今何もしなければ、いい未来はこない」ってことなんですから。
前回記事「【DJ SODAさん被害】気づいている?日本は「痴漢大国」。痴漢を容認する価値観と、安心して痴漢行為を続けられる環境が整っている恐ろしさ」はこちら>>
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