インタビュー前編では、ご自身の中に価値を見出し、人生の「第二幕」を進行中、というお話をしてくださった望海風斗さん。後編では、望海さんが宝塚歌劇団を退団・そして役者人生を新たにスタートしたところから始まった、ご家族の「第二幕」や、それまではなかった男性の俳優さんとの共演、そして望海さんが参加される新たなプロジェクトについてもインタビュー。望海さんが考える「何か新しいことを始めるためのヒント」についても、教えてくれました。

インタビュー前編
望海風斗さんが「私にはできない...」の堂々巡りをやめて気づいた、「ゆっくり迷えばいい」>>

 

望海風斗(のぞみ・ふうと)さん
10月19日生まれ、神奈川県横浜市出身。2003年に宝塚歌劇団入団、同年花組に配属。2017年から雪組トップスターに就任し、三拍子揃った実力の中でも、特に歌唱力に秀でた男役として活躍。『ファントム』『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』『fff-フォルティッシッシモ-』などの代表作で主演を演じる。2021年4月11日、宝塚歌劇団を退団。同年に行われたコンサートツアー『SPERO』では全国で5万人を動員するなど、その人気はとどまるところを知らない。退団後の出演作には、『INTO THE WOODS』や『next to normal』『ガイズ&ドールズ』などがある。2023年は『ドリームガールズ』『ムーラン・ルージュ!』などに出演。来年は日本発のオリジナルミュージカル『イザボー』での主演が決まっている。

 

「うわー、これだ!!」というトビラが開いた瞬間


——新しいことに軽やかに挑んでいる望海さんが、2023年最大の挑戦といっても過言でない、大きな舞台に立たれました。日本初演となった『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』では、ヒロインであるサティーン役を熱演! まだ記憶に新しい作品でのお話を聞かせてください。

望海風斗さん(以下、望海) 『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』はすごく難しかったですね。かなりつくり込まれた世界観ですからリアルなお芝居は要求されなかったのですが、私自身がずっと“リアルじゃない世界”で舞台に立ってきたので、本来はバーンと開放してしまえば成り立つはずが、サティーンを表現するうえで一番大事にしたいところが上手く出せなくて……。

——望海さんの演技力にかかれば、とても簡単なのでは? と思ってしまいます。

望海 いや、そんな……(笑)。この作品の中で一番開放しないといけない部分がなかなか開けなかったんです、私。でも、本当に最後の最後でバーンとトビラが開いたような瞬間があって、「ああ、これか!」と思いました。役柄でもそうですし、自分自身においても頑なに開けなかった“何か”が開いた感じがあったんです。

 

望海 私は20年以上舞台に立ってきたので、決して新人ではないんですよね。そして『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』はセットや音楽の、何から何まで揃っている作品で、あのセットや世界観に負けないように自分は何ができているんだろうと、ずっと葛藤があったのですが、最後の最後でやっと「うわー、これだ!!」というのが来て。

正直、「2ヵ月間やってきて今?」という気持ちもありましたが(笑)、でも2ヵ月間やったからこそできたのかもしれないですし、周りの方々との掛け合いのお陰だとも思いますので、それはすごく嬉しかったです。