70歳頃からかかりつけ病院の検討を
以前の記事では、高齢になったら「かかりつけ医」ではなく「かかりつけ病院」を持つことを提案しました。たとえば在宅介護をしていると、急な体調変化があった時に駆け付けられて、何かあったらすぐに入院できるかかりつけ病院は強い味方です。
かかりつけ病院は70歳頃から検討すると良いですが、健康であれば、後期高齢者になる75歳をきっかけに考えても良いかもしれません(とは言え、本当に健康であれば、病院にお世話になる機会がないかもしれませんが……)。
75歳という年齢は、脳血管疾患や肺炎、認知症、転倒骨折などが一気に増える頃。脳血管疾患は男性70代、女性80代に多く、高齢者に多い誤嚥性肺炎は80歳を超えると多発します。また、アルツハイマー型認知症は75歳過ぎから急激に増加し、骨折の中でも大事に至る大腿骨骨折は80歳以降に多く見られます。
基礎疾患に高血圧と糖尿病のある方はすでに病院にお世話になっていると思いますが、かかりつけ病院は必須です。理由としては、高血圧は心疾患と脳血管疾患のリスクがあり、糖尿病は神経障害や網膜症、腎不全、動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞などの合併症を起こしやすいから。高血圧と糖尿病の人は入院リスクも高いので、入院設備のない診療所より病院の方が安心です。
在宅療養支援診療所も視野に
高齢者世帯は、ただ闇雲にかかりつけ病院を選ぶのではなく、退院後のことを考慮して、在宅療養支援診療所を選んでも良いと思います。
在宅療養支援診療所とは、24時間体制で往診や訪問看護が可能な施設のこと。自宅で療養する方が医療サービスを受けるにあたり、医師や病院を探したり、さまざまな事業者と連絡を取り合ったりしなくて済むように、一元的に管理する役割も担っています。
「在宅療養支援診療所」という名称の診療所があるわけではありません。さまざまな病院が在宅療養支援診療所に指定されており、最寄りの在宅療養支援診療所はこちらの検索サイトで探すことが可能です。
紹介状なしの大病院受診は初診7000円から
病院というと、大病院を押さえておけば安心と思う方も多いかもしれません。 ですが紹介状なしで大病院を受診すると、初診は最低でも7000円~、再診は3000円~の上乗せ料金がかかってしまいます。
筆者は以前、遠方から両親を呼び寄せ、在宅介護をしていました。私自身は、仕事をはじめ限られた時間で何かとやらなければならないことも多かったので、自宅から5分の距離にある地域密着の病院をかかりつけにしていました。200床未満の中規模の病院でしたが、自宅からとにかく近かったので、会社帰りや休日にも気軽に顔を出せて、互いに安心だった記憶があります。
たとえ肺炎などになったとしても、できる治療は限られているので大病院でも中規模の病院でもあまり変わらないと思っていましたし、何かあった時にはさらに大きな病院を紹介してくれるので、問題なかったというのが本心です。
先ほど紹介した在宅療養支援診療所の検索サイトで自分の居住地を調べてみると、両親がお世話になっていたその病院もヒットしていました。在宅療養支援診療所という名称なので、小さなクリニックなどを想像されるかもしれませんが、ある程度の規模の医療機関も登録されているのでご安心ください。
かかりつけ病院の探し方
高齢者に限らず、かかりつけ病院を探す際には、厚生労働省が提供する「医療情報ネット」というサイトも参考になります。在宅療養支援診療所はここから調べることもできますが、先ほどご紹介した検索サイトよりさらに上位の検索サイトと認識してください。医療機関の診療科目や診療日、診療時間、対応可能な疾患・治療内容等の医療機関の詳細が一覧になっており、かかりつけ病院を見つける一助となります。
患者が多い病院が必ずしも良いとは言えませんが、人が集まるには必ず良い理由があります。患者に寄り添い説明がわかりやすい、専門的治療が必要な時は適切な病院を紹介してくれる、最新治療に詳しい、待ち時間が短い、清潔感があってスタッフの雰囲気が良いなど、選ぶ側も何か判断基準を持つと良いでしょう。
自分は何を優先するのかを考え、まずは2〜3回通ってみて、合わないと感じたらかかりつけ病院を変更しても良いのではないでしょうか。
構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
イラスト/Sumi
編集/佐野倫子
前回記事「【金融の勉強を始めたい方におすすめのリンク集付き】人生100年時代に考えたいお金の話」>>
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