4ヵ国、計9ヵ所の学校に通った少年時代。異国での寂しさや思春期の悩みを紛らわすために作詞作曲を開始
――キム・ジョンワンさんが作詞・作曲をはじめたきっかけを教えてください。
初めて曲を作ったのは9歳のころだったと思います。ピアノを習い、楽譜を見て弾くよりも思い浮かぶ音を弾いてみることに興味を感じるようになりました。本格的に歌詞がある曲を書いたのは、中学校3年生の時。ギターを弾きだした頃からです。
当時はスイスに住んでいたのですが、異国での寂しさや思春期の悩みなどを紛らわすための方法として曲を書きはじめて今に至ります。
――韓国メディアとのインタビューで、「20代のNELLの曲には怒りが込められていた」と語っています。怒りや感情に訴えかけるサウンドは、どんな人生経験や感情から生まれてきたのでしょうか。40代になった今、サウンドに込める思いはどのように変わりましたか。
わたしが生きてきた人生の過程と密接に関連していることですが、わたしは父の職業上、幼いころから頻繁に引っ越しを繰り返してきました。
小学生から高校生までの間に4ヵ国、計9ヵ所の学校に通い、その過程でわたしはどこにも属せない人間だという感覚に陥りました。アイデンティティに対する疑問も抱きました。幼い時期はそのような状況や感情を受け入れ理解するより、恨みや怒りで表現していたように思います。しかし今は、少し自分や自分を取り巻く環境を理解しようと努力していて、そうすることによって自然と音楽のスペクトラムが広がりました。未だに神経を尖らせることもありますが、20代のわたしと比べると、今は多様な感情や考えを少しは話せるようになったと思います。そういったことを含めいろいろなサウンドを包括的に生かすようになってきたと感じます。
――最新のシングル「Moon Shower」は「裏路地に捨てられているロボットのイメージ」と語っていますが、どんな時に着想を得たのでしょうか。
NELLの最新シングル「Moon Shower」のMV
歌詞を先に書いた曲ではない場合、サウンドを聞きながら浮かび上がる視覚的なイメージがあるのですが、この曲は薄暗い路地裏がまず思い浮かびました。さながらバットマンの映画に出てくるような陰鬱な路地裏で、そのイメージから始まる歌詞は、全ての運命が決まっているのならなぜ誰かは幸福で誰かは不幸でなければならないのか、その運命に抵抗することはできないのか、という考えから繋がってきています。
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