米倉涼子さんが見た、最新のおすすめエンタメ情報をお届けします。
ドラマや映画から価値のあるメッセージを受け取るためには、その作品に出会うタイミングも大切だなと思うことがあります。
改めてそう感じたのは、大谷翔平選手が大リーグのスター選手になるまでの軌跡を追いかけたドキュメンタリー『Shohei Ohtani −Beyond the Dream−』を観たから。
これから先、自分がどんなペースで未来に向かって進むべきなのかを考えているタイミングで観たこの作品は、私に大きな気づきを与えてくれました。
このドキュメンタリーでは、岩手で生まれ育った大谷選手の少年時代の様子も描かれています。
興味深かったのは、夢へと近づくために高校生のときに大谷選手が書いたという目標達成のためのチャート。
賢く、たくましく生きてきた人だとは思っていましたが、10代の頃からこれほどまでにはっきりとしたビジョンを描いていたことに、とても驚きました。
大リーガーになりたいという夢があったとしても、きっと遊びたい時期もあったと思うんです。
でも若い頃から自己管理能力が高い人だったからこそ、自分の目標に近づくことができたんだな、と。
あのチャートを見るだけでも、大谷選手のすごさが伝わってくるような気がします。
自分がいる位置を冷静に見つめている大谷選手の落ち着いた語りはもちろん、ナレーションも担当している松井秀喜さん、ダルビッシュ有さんや栗山英樹さんたちの証言も貴重なものばかり。
対談形式ではなく、証言者たちがインタビューに答える様子を撮った動画を大谷選手が見てコメントを返し、その動画をまた彼らが見る……というスタイルが取られています。
それだけに素に近いような反応が見られるのも、このドキュメンタリーの面白いところです。
もしかすると、以前紹介した、侍ジャパンに密着したドキュメンタリー『憧れを超えた侍たち 世界一への記録』の方が手に汗握る瞬間が多い作品かもしれません。
でも夢への一歩を踏み出したひとりの人の記録としては、こちらの作品の方が見応えがあると思います。
ずっと二刀流ができるかどうかはわからないし、怪我もあるかもしれない。まだ若い彼がアクシデントに直面したときに、どんなビジョンを描いていくのか。10年後の彼が楽しみになる作品でもあります。
私は今、体調面で不安定なところがあり、歩みがゆっくりになっている状態です。女優の仕事を始めた頃はいつか主役を演じたいと前のめりになったり、気合いと根性で歌ったり踊ったりする仕事にも挑戦したり……、ハリネズミがぐるぐる回るような状態で勉強もしてきました。
でも今はときにはちょっと止まって、少しずつでも前に進んでいくことの大切さを知るために必要な時期なのかもしれないと思っています。
大谷選手のように自分がやるべきことをクリアにするために、例えば余命30年と考えてみる。
そうすると、海外の仕事に挑戦したり、またヒールを履いて舞台に立つためには具体的に何をするべきなのかが見えてくるし、時間を無駄にすることはできないなと思えてきます。
もちろん大谷選手と生きる場所は全く違いますが、このドキュメンタリーを観たことで、もっと頭を使って人生のセカンドステージのイメージをはっきりさせていこうとより考えるようになりました。
ミモレ世代の方たちの中には、子育て真っ最中の方から、もうすぐ母親業を卒業する方まで様々な人たちがいると思います。
自分にとっての幸せとはどんなことで、残された時間をどうしたいと考えているのか。どんなステージにいる人にとっても、自分と向き合うきっかけをくれる作品なのではないかと思います。
<映画紹介>
『Shohei Ohtani - Beyond the Dream』
現在米メジャーリーグのエンゼルスで唯一無二の二刀流選手としてプレーしている大谷翔平選手。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)や米大リーグ・オールスターでの活躍も記憶に新しく、いまや日本を代表する世界的スーパースターだ。このたび、そんな大谷翔平選手への6時間以上のロングインタビューが実現。奇跡の映像の中から、大谷選手の幼少期の頃から二刀流の選手として成功を収めている今に至るまでの、人生でのさまざまなターニングポイントの裏側に焦点をあて、編集したおよそ100分のインタビュードキュメント映画。ディズニープラスにて独占配信中。
取材・文/細谷美香
構成/片岡千晶(編集部)
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