煩雑過ぎる書類申請

「勉強したことは大人になったら使わない」なんて声も聞きますが、気づかないだけで、無意識のうちに私たちは学習能力を使って生きています。例えば仕事で何かを覚えることもそうですし、物事の優先順位を決め、先を見通して計画的に進めることなどもそうです。その中でも特に、書類を読み解き、申請することは難易度が高く、学習能力をフル活用することではないでしょうか。

「やる気がない」「さぼっている」と誤解されてしまう、発達年齢が平均的な子の7~8割の「境界知能」とは_img0
 

今の日本の社会は「申請主義」と言って、何をするにも自ら情報を取り寄せて、書類を書き、申請しなければならないんです。何らかの支援制度が用意されていても、まずその情報を見つけ、書類のたくさんある項目を埋め、煩雑な手順を踏まなければなりません。たとえ境界知能の人でなくても、書類を読み解くのはとても難しいです。特定の人への給付金制度があっても、まずその情報にたどり着かなければ利用できません。情報を見つけたとしても、申請書類をそろえ、必要な項目を埋める必要があります。その段階で、中には難しくて断念してしまう人もいます。生活保護や障害年金といった制度も、申請が難しく、申請代行を利用する人もいるんです。当然成功報酬として、申請が通った場合にもらえたお金の何パーセントかを払う必要があります。この事実を知った時、とてもびっくりしたんです。え、公的制度なのに民間の業者にお金を払って申請を代行してもらわないといけないっておかしくない? と。書類は誰でも書けるくらい簡素にするべきでは、と思うんです。

社会の初期設定の基準があまりに高すぎる、と感じることが多くあります。社会の平均、またはそれ以上の人を基準に制度が出来上がっているから、こぼれ落ちてしまう人がいます。生活していくのに必要な制度を利用するためのハードルが高すぎるって、やっぱり問題だと感じます。書類や手続きを簡素にしたり、サポートを受けやすくするなど、「読み書きや内容を理解することが難しい人がいる」という前提での工夫がもっと必要だと思います。

 
「やる気がない」「さぼっている」と誤解されてしまう、発達年齢が平均的な子の7~8割の「境界知能」とは_img1
 

『マンガでわかる境界知能とグレーゾーンの子どもたち』
(扶桑社)

「子どもの行動に関心のある大人すべてが今スグ読むべき一冊」養老孟司さん絶賛!
50万部超の大ベストセラー『ケーキの切れない非行少年たち』の著者による生きづらい子どもたちを救う“具体的な対応策”

近年よく取り上げられる「発達障害」や「知的障害」の子どもに関する書籍は多数あります。
しかし、発達障害や知的障害とは診断されないものの、生きづらさを感じている子どもたちがたくさんいるのを知っていますか?
IQ69以下の知的障害には該当しない一定の支援が必要な「境界知能」や何かしらの課題があるけれどはっきりした原因や状態がわかりにくい「グレーゾーン」と位置づけられる子どもたちのことです。
本書は教育現場や家庭で見逃されがちな彼ら、彼女らへの具体的な対応策を、困っている子どもたちの支援を行う「日本COG-TR学会」を主宰する著者が漫画でわかりやすく紹介しています。

「境界知能」とは?
・昔は知的障害と定義されていたIQ70~84の人
・35名のクラスに約5人いる
・日本人の7人に1人
・平均的な子の7~8割くらいの発達年齢


写真:Shutterstock
文・構成/ヒオカ
 

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