一生妻以外とセックスできないなんて、嫌だ


篤史さんご夫婦は、ワインスクールで出会いました。

5歳年上の妻は当時から自営業で、1人さまざまな事業を手がけていました。帰国子女でワイン以上の趣味はバックパック旅行という、強い自立心と行動力の持ち主だったそうです。

「僕は初めから、彼女のことをすごくかっこいいと思っていました。というのも、当時20代だった僕はいわゆる『何者かになりたい系のサラリーマン』で、自己啓発本などを読み漁り、キャリアやメンタル面など迷走している節がありました。

一方、彼女はまるで僕と正反対で、すでにいろんなビジネスをして。細かいことを気にせず行動する性格で、例えば、急に絵を大量に描いて知人のギャラリストに売り込み、本当に絵を買い取られて個展を開く……それで、けっこう売り上げをあげちゃう、とか。他にも不動産事業やアパレルなど、思い立つと行動を起こし、うまく成功させちゃうんです。

僕は『これを達成するためにはこのくらいの努力と弱点克服が必要』とか細かく考えちゃうタイプなんですが、彼女は感性だけでどんどん突き進んでいく。僕の固定概念を壊されるような『新人類』って印象でした」

 

篤史さんの口調から、自分にはないものを持った妻に強く惹かれた様子がよく伝わります。きっと逆も然りだったと思いますが、2人は数年の交際を経て結婚することになりました。

けれどこのとき、篤史さんは結婚に対してあまり前向きではなく、ある面においてどうしても「自信がなかった」のだそうです。

 


「当時29歳で、正直結婚願望もなかったし、結婚生活も想像できませんでした。彼女の祖母に持病があり、早く結婚式を見せてあげたいから……という流れで結婚の話が出ましたが、彼女がどうこうではなく、『結婚』というもの自体にいまいち納得ができなくて。

女性からしたら『お前死ねよ』って思われるでしょうが、『生涯愛する』『永遠の愛を誓う』『セックスの相手が一生妻1人』なんて……普通に、嫌だなと思ったんです。彼女のことは心から好きでしたが、いや難しいと思って。それを彼女に伝えたら、大喧嘩になりました」

結婚の覚悟がないこと、生涯1人の相手を愛する制約に疑問を持つというのは、現実問題、男性だけでなく多くの人が実は抱えている本音だと思います。しかしながら、なぜそれをわざわざ本人に伝えたのか? と、つい言葉を遮り質問してしまいました。

「正直でいたかったから。本当に結婚するなら、臭いものに蓋をしたくなかった。まあ、うまく隠して要領よく立ち回るとか、自分自身で背負うという選択もあったと思いますが、将来一緒にいるなら『そんな自分も受け入れて欲しい』みたいな気持ちがありました。

これは、甘えなのかもしれませんが」