学級崩壊の原因が、まさかうちの息子!?


「2学期が始まった頃、学校の保護者会から帰ってきた妻の顔が真っ青だったんです。また成績のことで情緒不安定なのかとどきどきしながら尋ねると……本当に恥ずかしいんですが、息子が学校で素行が大変に悪く、厳重注意を受けたというのです。

ショックでした。成績なんて二の次だ、人間としてまっとうであることが大事だと思っている僕にとって、一人息子がそんなことになっているなんて……。正直、家ではどちらかというと大人しい子で、そんな素振りはなかったんです」

近年、都心の小学校で高学年になると授業が立ちゆかないケースがあると聞きます。先生の指示を聞かない、ひどく騒ぐなどの行動をとる児童がいて、その原因のひとつに中学受験のストレスがあると聞きました。

博己さんの息子である壮馬くんも、騒いで授業を妨害しているとのことで、これはご夫妻にとって予想もしない衝撃でした。

「僕はとにかく担任の先生に謝罪して、壮馬にもきつくお灸をすえるつもりでした。ところが妻は『大事な時期にこれ以上壮馬を追い詰めないで。私からうまくいうから、刺激しないで。塾の友達と一緒になって悪ノリしているだけ。勉強が大変なのよ』と言うんです。開いた口がふさがりませんよ。

そりゃストレスでしょう、小学生だというのに週に4日も塾に行って、休みの日は1日10時間の勉強もザラです。だからと言って学校で騒ぐなんて、親として恥ずかしくて……。それなのに妻は『担任の先生は中学受験をする子を目の敵にしているから』と、息子をかばうような発言ばかり。まさか自分の妻がモンスターペアレンツになるなんて。良識があることにかけては僕よりもずっと間違いのないひとだったのに……」

 

博己さんのショックは伝わってきました。それと同時に、由梨さんが必死で中学受験というゴールに向かって辻褄を合わせようともがいていることも。おそらく由梨さんも、学校でストレスを発散することがとてもよくないことだとわかっているはず。

 


それでも3年間の塾の授業料、なによりも自分の、そして子どもの血のにじむような努力を最後の半年で無にすることだけはあってはならないと思いつめているのでしょう。

もう少し、あと少しだから、と由梨さんは博己さんに懇願したそうです。

夫婦でこのように「正義」がすれ違ってしまった場合、そしてそこに子どもが絡んだとき、向き合えば向き合うほど相手のよくないところが見えてしまうのかもしれません。