4位:『バリー シーズン4』
これもコメディ……なのですが、打って変わってダークでシュールな一作です。元海兵隊員で凄腕の殺し屋バリー(ビル・ヘイダー)は、父の友人で彼を殺し屋業に導いたフュークス(スティーヴン・ルート)の指示のもとギャングから依頼された殺しを実行していますが、あるときLAで俳優を志すサリー(サラ・ゴールドバーグ)と出会ったことで、著名な俳優であるジーン・クスノー(ヘンリー・ウィンクラー)が主催している演技クラスに入ることになります。
殺し屋がLAで演技に目覚めるという突飛な設定だし、アクの濃いキャラクターが次々に登場し、さらにギャングの抗争のなかでひとがバンバン死にまくるという、かなりぶっ飛んだ話ではあります。ただそのなかで、戦場を経験した人間が抱えるPTSD、恋愛関係や師弟関係における共依存、アメリカン・ドリームのもとに隠された野心と承認欲求といったシリアスなテーマが同時並行的に語られていきます。
とにかく主演・制作を務めるコメディアン/俳優のビル・ヘイダーが圧巻で、彼が抱える苦悩を強烈な顔芸で表現しています。彼が追い詰められていく様があまりにヘビーで、かえって笑ってしまうから恐ろしいったらありません。
フィナーレとなったシーズン4では生き残ったキャラクターたちの顛末が語られますが、僕はある種の濃厚なラブ・ストーリーとして見ました。バリーとサリーだけでなく、バリーとフュークス、バリーとクスノー先生、敵対するギャング同士から恋人になったノホ・ハンクとクリストバルまで、濃密な人間関係には愛だけでなくつねに憎しみが張りつき、献身だけではなく利用と依存がつきまといます。そんな、あらゆるものがグチャグチャに入り乱れた一対一の関係の恐ろしさを、シュールなコメディとして語ったのがこのドラマなのだと感じました。
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