1位:『トップボーイ』(S3)
ロンドンのギャングたちの姿をタフに活写した本作も今年で終了。このドラマの売りはまず、アッシャーDやケイノ、リトル・シムズといった現役で活躍するイギリスのラッパーたちが俳優として出演していることでしょう。さらに音楽を担当するのはアンビエント・ミュージックの巨匠ブライアン・イーノ。イギリスの音楽文化とダイレクトに交わった作品です。
ただし、本作はギャングたちの物語をクールに描くのではなく、むしろ彼らのハードな日常を静かに見つめていきます。貧困地域で育った幼馴染のダシェン(アッシャーD/アシュレー・ウォルターズ)とサリー(ケイノ/ケイン・ロビンソン)はギャングとしてのし上がろうと数々の悪事に手を染めていきますが、そうでもしないと貧しい暮らしからなかなか抜け出せない現実がここでは突きつけられているのです。けれどもふたりは、大物になっていくに従って大切なひとを失い、もう取り返しのつかないところまで行ってしまいます。
基本的にはふたりを中心としてギャングたちのドラマが繰り広げられるのですが、本作は移民や貧困層が多く暮らす公営住宅を舞台に、そこで暮らす人びとを群像的に描き出してもいます。彼らは格差と移民排斥と人種差別と都市の再開発のなかで苦しい想いをしているのですが、それでもコミュニティ内には草の根的な助け合いも同時に存在します。階級社会の「下」で生きる人びとの連帯をしぶとく語り継いできたイギリスのドラマの誇りを感じさせるところです。
最終シーズンでこのドラマは衝撃的なエンディングを迎えましたが、それも容赦なく「彼ら」のリアリティを描き続けてきたから。ここで繰り返される悲劇は絵空事でなく、いま起こっていることなのだとこのドラマは訴えているのです。これから観るという方は、Netflixでは最初の2シーズンは『トップボーイ:サマーハウス』として配信されているのでご注意ください。
どれも全部観るとなるとけっこうな長さなのですが、それぞれ異なる魅力のある作品であることは保証します。僕にとっては、優れたドラマがまさにいま世界で起こっていることを語っているんだとあらためて感じた一年でもありました。
取材・文/木津毅
構成/山崎 恵
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