パソコン作業を通して見せた才能の片鱗
GAKUさんの8歳の誕生日、佐藤さんは彼にノートパソコンをプレゼントします。すると、多動症でじっとしているのが苦手だったGAKUさんが、黙々とパソコンで作業するようになります。そこには、彼が切り抜いた画像ファイルがタイトルごとにフォルダに整理されており、すべてにファイル名がつけられていました。しかも、1フォルダにつき900枚くらいの画像ファイルがあったといいます。
GAKUさんの並々ならぬ集中力と執念を垣間見たような気がした佐藤さんは、彼にお下がりのアイフォーンを渡します。すると、GAKUさんは写真を撮るようになりました。
「そこには不思議な構図の写真がたくさん並んでいた。脈絡のない部屋の写真やら、外の景色が写っている。でもこれらの写真から、がっちゃん(GAKUさん)が普段、何をどのように見ているのかが少しだけわかるようになった」
佐藤さんにはGAKUさんの画像集めや写真撮影の意図が理解できませんでしたが、だからといって止めることはしませんでした。後年、佐藤さんはこう振り返っています。
「いずれにせよ、彼が持つ潜在的な集中力は、のちに彼のアート活動で本領を発揮するようになる。だから、彼がずっとパソコンをやっているときに『やりすぎ』と止めなくてよかったと思っている」
さらに、子どもの好奇心を目の当たりにしたときの対応について、このような考えを述べています。
「何事も、本人が納得するまでやるのは大切だと思う。何かに深く集中することにより、そこから得られる知識や知恵もある。それを大人の狭い感覚でやめさせるのは、得策ではないだろう。子どもの邪魔をするのではなく、子どもの好奇心を後押しするのが、大人の役割だと思っている」
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