「彼の絵にふれているとハッピーになれる」。重度の自閉症を抱える少年が起こした奇跡とは？

明るくハッピーでパワフル。GAKUの絵が愛される理由

世田谷美術館での展示会の後、アーティスト・GAKUの評判は瞬く間に広がり、テレビや新聞で取り上げられたり、LeSportsac、THE BODY SHOP、GODIVA、DIANAをはじめとするさまざまな企業とコラボしたりと、活動の幅を広げていきます。またこの夏には香港のIFCモールで巨大なインストレーションも実現。佐藤さんは、GAKUさんの絵が人を惹きつけてやまない理由をこのように述べています。

「コラボを提案されるときに、企業側から必ずいわれることがある。『自閉症だから、SDGsだからということではなく、純粋にGAKUさんの作品にふれているとハッピーになれるからです』。たしかに、GAKUのような作品は日本にはあまりない。ビビッドでポップな色彩感覚を持っている。そして、絵に登場する動物もみんな大きなスマイルで尻尾を上に振っている。『部屋の中にGAKUの絵が1枚あるだけで、空間全体がパッと明るくなります！』。絵を購入してくださる方々も、同じことをいってくださる。GAKUの絵から発信されるハッピーの力は、パワフルだという」

絵を通して他人を明るくハッピーにする力を秘めたGAKUさん。一方、彼自身も絵を描くことでさまざまな恩恵を受けることができました。

「こうやってまわりの仲間や友達だけでなく、企業やブランドからも愛されているGAKUは幸せ者である。自閉症という障害、言葉の壁を乗り越えて、一人ひとりと、そして社会とつながれるようになったのだ」

佐藤さんはGAKUさんの成功を喜ぶ一方で、そこに浮足立つことなく、彼の成功がもたらす影響について考察しています。そこには、自閉症の子どもを持ち、自閉症と真摯に向き合ってきた人ならではの切実な思いが込められていました。

「GAKUの自閉症を変えることはできないが、GAKUにとって生活しやすい環境をつくることはできている。GAKUが今後、より広い世界へ羽ばたいていくことができれば、世の中の自閉症に対する認識を変えることができる。そして彼にとってより住みやすい世界になれば、それは他の自閉症当事者にとっても暮らしやすい社会になるのだ」