「予算が1000万円以上ある」といっても優先順位をつけることが重要


家を変化させるためには、家具や照明などを変える模様替え、壁を塗るなど自らできることを行うDIY、プロによる工事を伴うリフォームなど、いろいろな方法があります。それなりの予算、例えば1000万以上の予算をかけて行おうと思った場合、A:自由度は制限されるけれどストレスも少なく、スムーズに進みやすい住宅メーカーによるリフォーム、B:好きな建築家やデザイナーを選び、コミュニケーションや時間がかかるなどのストレスはあるものの、より理想の空間を作りうるリフォーム、という2つのタイプが考えられます。

Aのタイプならば、ある一定の選択肢から選ぶことになるので、時間をかなり節約できます。一方、Bの場合は建築家やデザイナーと話し合いながら決めることが大量にあります。そこで大切になるのが、関わる全員が共有できる「デザインコンセプトをはっきりとさせること」です。

例えば、下記の写真は京都のマンションを「北欧✖︎伝統的な京都」というデザインコンセプトでリフォームした事例です。北欧モダンな家具や照明器具を茶室のような空間に配置する、“洋の和室”をゴールに設定。どのように工夫したら実現できるか、細部にわたって計画を立て、共有できる資料を作っていきました。言葉で表現するのが難しいなら、写真などでなるべく具体的に、自分がどういうゴールを目指しているかを伝えることが大切です。「これもいい、でもやっぱりこっちかな?」と決断を迷っていると、その迷いはコストに反映されることになります。

【予算が100万でも1000万以上でも】リフォームで肝心なのは「コストコントロール」<行正り香・インテリアのヒント>_img0
壁、床、天井などの素材、入り口や飾り棚などのディテール、家具や照明のテイストなど、個々の要素ごとに決めていくのではなく、トータルで考えないとチグハグな印象になりかねません。

限られた予算でキッチン、お風呂場などの水回り一式を変えたい場合は、そもそも壁や床にかける金額が限られてくるため、デザインコンセプトや資料を作るまでは必要ないかもしれません。ですが、これまでの回でもお伝えしてきましたが、家の印象をガラリと変えるのは、目に見える大きな面積を占める壁や床、家具の素材感です。それらの仕上げにお金をかける場合は「どんな空間を目標にするか」を先に定めて、素材を選ぶときに「そのコンセプトに合っているか?」をチェックしながらセレクトしていく必要があります。

上記のリフォームのゴールは、茶室のような空間。壁や天井の仕上げに対して重点的に予算を配分したかったため、お風呂やトイレ、床は基本的にはリフォームしないこととしました。同様に、キッチンは竹の突板でつくった扉に取り替えることにして、基本の土台は変えませんでした。床も既存のフローリングをそのままに、畳の色に近いベージュ系のラグを配置することで床にかかるフィーを低コストで抑える工夫をしました。目指すゴールによって優先順位を決めないと、コストコントロールもままなりません。

【予算が100万でも1000万以上でも】リフォームで肝心なのは「コストコントロール」<行正り香・インテリアのヒント>_img1
部屋の雰囲気に合わせた突板を貼るだけで、既存のシステムキッチンも変化。冷蔵庫も正面扉に板を貼れるタイプをセレクトすれば、より統一感のある雰囲気に。

1000万を超える予算で(コストのかかる水回りを変えないで)、建築家と作り上げていくようなリフォームとなると、決めることが数多くあります。一つのデザインコンセプトのもとに、ゴールを考えてセレクトしていかないと判断基準が曖昧になってしまい、個々のデザインに凝ったつもりが、トータルで見るとチグハグなものが出来上がってしまった、という結果になりかねません。また、あれもこれもと変えていくと、コストもどんどんかさんでいきます。

 

想定の予算内で理想の住まいを実現するには


リフォームをする時は、ぜひ複数のリフォーム会社やデザイン会社のホームページを見て、掲載されている事例が自分の目指している方向性と似通っているかを確認してみましょう。リフォームに関して、私は「What you see is what you get」(見た通りのものが得られるもの)だと思っています。例えば、上記の家でいうと、私が望んでいた漆喰壁や土壁という選択肢がない会社に「こうしたい」とお願いしても難しいでしょうし、どんな仕上がりになるかは全く想像がつきません。

洋服や靴ならば理想のコーディネートを頭の中に描き、予算との兼ね合いも含めて、何時間もお店を回ったりネットで探したりしてセレクトしますよね。なのに、家づくりという大きなお買い物となると、なぜか自ら細かく調べたり確認したりすることなく、相手(リフォーム業者)まかせで進めてしまいがちです。
思い描く理想があるならば、それを実現するにはどうすればいいのか、自らリサーチをすることが第一のステップです。

☑︎ イメージとなる画像を集める
☑︎ 参考となる資料をまとめる
☑︎ 広さと使いやすさを考えた間取りの可能性を探る
☑︎ コストとの兼ね合いを考えて優先順位を決める
☑︎ 自らのD IYでできることはないかを考える

…… といった労力と工夫をいとわないのが、納得のいくコストで理想の住まいを叶える重要なポイントです。大変ではありますが、この先、まだ何十年と(あなたが40歳ならば残り30年以上、50歳ならば20年以上?)住み続ける場所です。思い通りの暮らしを実現させましょう!


納得のいく家づくり・部屋づくりのための 
〈 HOMEWORK 〉

もしあなたに潤沢な予算があってリフォームできるとしたら……?

□ どんなデザインコンセプトで何をしたいですか?
□ 一番実現したいあなたの「ゴール」は何ですか?
□ あなたが望むことを実現してくれそうなプロは周りにいますか? リサーチしてみましょう。

□ 間取りについて、床や壁などの素材について、今の住まいに不満はありませんか?
〜行正り香さんのリノベーション本が6月に発売されます〜
これまでのミモレの連載でもご紹介してきた、行正さんが監修したマンションや戸建てのリノベーション実例の数々をもとに、理想の家作りについてお伝えする本です。自分のイメージを具体化させる方法、予算別の考え方、広く見せるインテリアのルール、家具や照明の選び方…… をご紹介します。どうぞお楽しみに!

写真・文/行正り香
撮影/結城剛太

 


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