予算の考え方は「何を変えたら部屋が変わるか」を第一に


「お部屋を変えて人生をリスタートしたい!」「これからは理想の住まいで暮らしたい」。そう思い立って自分が好きな、理想とする写真を1枚見つけたら、次にやるべきことはなんでしょうか? 後回しにしてしまいがちなのですが、それは「予算配分を考える」ということです。
リノベーションや模様替えにかかってくる費用は内装の工事費用だけではありません。家具、カーテン、家電、そして照明器具。つい、リフォーム会社(工務店)の見積もりだけをリノベ予算として考えがちですが、それ以外の全てのことを含めて「何にどれくらいかけるか?」を見積もっていかなくてはなりません。

部分的なリノベーションをしたこちらの事例を見てみましょう。キッチン・お風呂などリフォーム済みの中古マンションを購入されたU邸。ご希望は「クラシックな行正スタジオのような雰囲気にしたい」とのことでした。予算をまず伝えていただき、そこから、逆算してアイデアを考えました。

こちらの住まいの場合、「どうすれば広々とした明るい家になるか」ということで、まず考えたのが間取りの変更。細かく部屋が分かれた2LDKという間取りでしたが、子ども部屋としてあった部屋との余計な壁を取払いました。そして窓がないために光がほぼささなかった部屋の壁に明かり取りの窓を施しました。さらに、壁色のトーンをモダンな真っ白い色からやさしいアイボリーに水性ペンキで塗装(施主さん自身がペイント)し、アイランドキッチンのピカピカした無機質な扉もモールディングをつけたうえでアイボリーに塗装。キッチン天板を変更したら、完全に違う空間となりました。また、同じデザインの照明器具を散りばめることで、空間全体の統一感が生まれました。

こちらがご夫婦がイメージとして希望された私のスタジオ。ローズウッドの家具にモールディングが施されたキッチンがクラシックな印象です。
夫婦二人暮らしとなり、「趣味の料理を存分に楽しみたい」ということから、使いやすいアイランド型のキッチンを住まいの主役に据えてリノベーション。

予算が100~300万円ならば、すべてのことをリフォーム会社に頼むのではなく、壁や天井の塗装など、できることは自分たちで行うことをおすすめします。また「何を変えたら部屋に一番インパクトを与えることができるか?」をじっくり考えてみる必要もあります。私の場合は、どのご家庭のリフォームをするにしても、まず照明、そして家具を考えます。インパクトを与えるものに予算を確保したうえで、ほかの作業にお金を分散していきます。

例えばキッチンのリフォームを考えるときも、300万という予算ならば、「キッチンだけ」をリニューアルするのはおすすめしません。まず照明器具、ダイニングテーブルと椅子を決めます。そして、コンロと換気扇を新しいものに買い換え、オーブンや食洗機を入れたりなどの追加をしたら、扉類を塗装屋さんに頼んでペンキで塗ってもらいます(キッチンの扉には特殊コーティングが必要なため)。この予算配分のほうが、キッチンが新しくなるだけでなく、「印象が変わった」という効果は大きくなります。

もし予算が余ったならば、ペンキとハケを買って自分たちで壁を塗り、絵画を壁に配置することで、部屋全体の印象も変化します。予算は使い方次第です。ちなみに家具も、新しいものだけが選択肢ではありません。いろんなサイトから中古家具を探したり、ヴィンテージショップで気に入る椅子などを見つけることもできます。

料理と同じで、限られた予算でリフォームするならば工夫が必要です。人まかせにするより、いろいろなところに素材を見に行って、理想の代替品を見つける、YouTubeなどでDIYの動画を見て、自分でもできそうなことを探していく…… そんな工夫をしてみてください。DIYスクールやセミナーもあるので、受講して勉強してみるのも一つのチョイスです。

予算は「全体にいくらかけられるか?」ということより、「どこを優先して配分していくか?」と考えることが重要です。優先順位を決められるのは、リフォームや模様替えを行う本人しかできません。ぜひお料理を作る気分で、予算配分を考えてみてくださいね。

 

納得のいく家づくり・部屋づくりのための 
〈 HOMEWORK 〉

もし300万の予算でリフォームしたいと思ったなら、何を変えたいですか? そのポイントを考えてみましょう。

□ 変えたいのは、キッチンの水回りなど機能的なことですか? それともデザインや古さなどの見た目ですか?
□ 部分的なリフォームをするにあたって、コストのリサーチをしたことがありますか?
□ 予算に応じて、一番お金をかけたいところ、次にかけたいところを考えてみましょう。 
 

写真・文/行正り香
撮影/結城剛太

 


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