医療分野の技術革新のスピードは、現代において加速する一方です。そんな中、人間が本来あるべき姿を見つめ、栃木の自然豊かな地で畑を耕す医師がいます。それが、那須烏山市国民健康保険七合診療所の所長、本間真二郎さんです。

本間先生は「自然に沿った暮らし方が、すべての病気を遠ざける」という考えのもと、日々食卓にのぼる食べ物も、自然農という方法で自ら育てた野菜を中心にしているのだそう。今回は新著『病気を遠ざける暮らし方 できることから、ひとつずつ。自然に沿ってゆるく生きる』から、本間先生が実践する「がんばりすぎない」自給自足について、特別に一部抜粋してご紹介します。

毎日が「盆と正月」のような食卓をあらためる。ある医師が実践する、自然に沿った暮らし方_img0
 

本間 真二郎(ほんま・しんじろう)さん
医師。那須烏山市国民健康保険七合診療所所長。1969年、北海道札幌市に生まれる。札幌医科大学医学部を卒業後、札幌医科大学附属病院、道立小児センター、旭川赤十字病院などに勤務。2001年より3年間、アメリカのNIH(アメリカ国立衛生研究所)にてウイルス学、ワクチン学の研究に携わる。帰国後、札幌医科大学新生児集中治療室(NICU)室長に就任。2009年、栃木県に移住し、現在は那須烏山市にある「七合診療所」の所長として地域医療に従事しながら、自然に沿った暮らしを実践している。家族は妻と一男一女。

 

わが家の畑で野菜を育て、「旬」でいただく


わが家の畑では、1年を通して20〜30種類ほどの野菜を栽培し、なるべくそれぞれの季節にとれる野菜を、「旬」でいただけるように工夫しています。

今思えば、栃木に移住したての頃は、いわゆる自然農という形へのこだわりがかなり強かったと思います。私は、生活のあらゆる面を、自然に沿ったものにすることを目標としていますので、農においても、いわゆる自然農による作物の栽培を始めたのは当然のことでした。

栃木に移住する少し前に、札幌で自然農による作物をつくっている農家さんとのご縁があり、月に1回ほど、つくり方や考え方を勉強させていただきました。

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写真:Shutterstock

それに加え、私は物事を徹底的に調べたい性格ですので、農を始める前に、当時手に入る自然農や自然農法に関する本を何十冊も読んで調べました。自然農あるいは自然農法というのは、呼ばれ方もやり方もさまざまなものがありますが、いずれも、「なるべく手を加えずに」「あるがままの自然の状態を工夫すること」で、作物を育てる方法になります。

具体的には、「土を耕さない」「雑草を抜かない」「農薬を使わない(虫をとらない)」「肥料や堆肥もほとんど使わない」……で、作物を育てるものが多いと思います。

土を耕さない理由は、土中のモグラやミミズなどの生物が動くことや、植物の根が伸びること、さらには、糸状菌などの微生物が菌糸を伸ばすことなどにより、自然に土は耕されるからです。そのため、トラクターなどの大型の機械や、その燃料としてのガソリンなども使う必要がありません。