共働きと「近接居住」。親が密接に関係する結婚環境

「格差シャッフル」が起こらなくなった日本。恋愛・結婚格差はなぜ起きているのか?【牛窪 恵さん】_img0
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——女性は結婚を考える男性に、年収や雇用形態(正規)だけでなく「家事・育児」の能力や姿勢まで求めるようになり、どんどん条件の項目が増えている、という話も本にありましたが、男性だけでなく女性も、非正規や低所得の人ほど「自分は恋愛・結婚できる身分じゃない」と考えるケースが少なくないそうですね。

・30~34歳で既婚の男性は、「正規(雇用)」では6割ですが、「非正規」では約2割しかいません。(P235〜236)

・男性に限らず女性自身も、未婚段階から「年収200万円にも満たない自分は、きっとこの先も結婚できない」や「非正規(雇用)だから、どうせ異性との出会いもない」など、結婚に後ろ向きなケースも目立つのです。(P245)

                       ——『恋愛結婚の終焉』より

牛窪:15~16年前から格差社会が顕著になってきています。また、いまは親御さんと仲が良い若者が多いので、彼ら自身も「親が喜んでくれるような条件の相手」と結婚したい、と考えやすいんですよね。現実にも、親としては、非正規の男性と結婚して欲しくないとか、学歴が低い女性はうちの子にはちょっと……と口にすることも多い。子どもは子どもで、親を喜ばせることが結婚のモチベーションになっている側面もあるので、親が言うのならそうしよう、親を悲しませるならやめておこう、と思ってしまうことも当然起こり得ます。

 

しかも「近接居住」といって、結婚・出産した後に、夫か妻どちらかの実家から“30分未満”の距離に住む方が、10年ほど前から、20、30代夫婦の65%を占めるほどになりました。今は夫婦共働きが7割ですが、お子さんが保育園で発熱したとき、近接居住ならじいじ・ばあばに迎えに行ってもらいやすい。土日に「お母さん、ご飯一緒に食べようよ」と誘って、調理を親に任せることも可能です。まさに、共働き夫婦の「頼れる助っ人」なわけですよね。そういう観点で考えても、「親が気に入ってくれる相手と結婚して、良好な家族関係を維持し続けたい」と考えるのは自然でしょう。