老いの現実に目を背ける「欲望肯定主義」の罠

 

「人生100年時代」といわれるほど長生きが当たり前になった現在。幸せな老後を過ごすため、多くの人があの手この手で健康維持に努めていると思いますが、その努力が完全に報われるとは限らないようです。というのも、程度の差はあれ、努力している人にもしていない人にも平等に病気や身体機能の衰えが訪れるからです。

 


劣化は避けられないという老化の現実に目を背け、「元気で長生き」「介護いらず医者いらず」を願うのは“欲望”であり、それができると信じて疑わない“欲望肯定主義”の危うさを指摘しているのが、多くの高齢者に接してきた医師の久坂部羊さんです。久坂部さんは自著『人はどう老いるのか』においてこのように述べています。

「現実から目を背けていると、実際の老いに嘆き、悩み、苦しむばかりです。快適な老いを実現するために必要なものは、一にも二にも現状の受容、すなわち足るを知る精神です。欲望肯定主義に乗せられて、いつまでも元気で若々しくさわやかに快適になどと思っていると、目の前の日々は不平不満に塗り込められるでしょう」

ここでいう「足るを知る精神」で快適な老いを実現するとはどういうことなのでしょう? 本書から抜粋してご紹介します。


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