見て見ぬふりをしていた気持ちを物語に変えたら、少し楽になった気がした
そんな時期を経ての「お願い わたしにさわって わたしを抱いて ひかりとともに」やったから、余計にそれまで深いところに刺さっていた棘を抜いてくれたような感じというか、見て見ぬふりをしていた深層心理に対しての気づきというか「ああ、おれはさわってほしかったんやな、誰かに抱きしめてほしかったんやな、自己嫌悪に陥ることなく堂々とひかりを浴びて街を歩きたかったんやな、心の深いふかいところでそれを渇望していたんやな」ということに気づいた号泣でもあったのだと今は思う。
それから、家に帰って「CATS」に出てくる猫たちの真似をして歌い踊ったり、グリザベラになりきって泣きながら「メモリー」を歌ったりすればするほど、なんだか心が軽くなって、しんどかった気持ちが物語のひとつになって成仏していくような、自分のことでもあるのだけど、同時に誰かのことにもなっていくような、少し自分から出来事が離れていって考察できるような感じがして、楽になるような気がした。
味をしめた私は9歳ながら宇多田ヒカルさんの「First Love」を寝る前に聴いて「最後のキスはタバコのflavorがした」と語る悲ロインになりきり、最後のキスもタバコのflavorも未経験ながら、お得意のおませな想像力を駆使して涙を流しながら眠りにつき、「キル・ビル」のユマ・サーマンになりきって、中学の通学路を布袋寅泰さんのギターを脳内でかき鳴らしながら日本刀を持って復讐しに行くような気持ちで登校し、「バベル」の菊地凛子さんになりきり、坂本龍一さんの「美貌の青空」を聴きながら新宿の街を彷徨い、そのただならぬ雰囲気にキャッチのお兄さん達がモーゼの十戒のように私の行く道をあけてゆく姿を感じながら悲ロ活を極めていった。
さて、お金もかからず、時間も場所も問わない気分転換法「悲ロ活」あなたもぜひ、やってみませんか?
ヒロイン=女性でなくともいいんです。男性でもそれ以外の性でも、人間でなくともいいんです。ご自分のお好きな映画やドラマやアニメや漫画や小説や歌や絵画や物語のワンシーンを再現してもよし、オリジナルのあなたという主人公の物語を創作してもよし。想像すること、妄想することには制約もモラルもありません。可能性は無限大。自分の感情を解放して、悲劇があったりなかったりするけど、今日もなんとか生きていて、めんどくさがらずにお茶碗洗えてるやん、靴下に穴空くぐらい頑張ってるやんという生活にカムバックするあなたは間違いなく最優秀人生の主人公賞受賞です。
ほんまに、おめでとうございます。
<INFORMATION>
坂口涼太郎さん出演
『ACMA:GAME アクマゲーム』
毎週日曜よる10時30分 日本テレビ系で放送中
日本有数の総合商社・織田グループの御曹司だった織田照朝は、13年前、父・清司を正体不明の男に殺され、全てを失った。犯人の目的は、清司が持っていた1本の古びた鍵……。その鍵を手に入れた者は、集めた鍵の数だけ運気が上がり、99本集めると、この世の全てを手にすることができるといわれる「悪魔の鍵」だ。
殺される直前の父から「悪魔の鍵」を託された照朝は、海外に脱出。以来、世界中を渡り歩いて「悪魔の鍵」の秘密を追っていた。そして──父の無念を晴らすため13年ぶりに日本に戻って来た照朝は、「悪魔の鍵」を狙うライバルたちとの命懸けの頭脳バトル「アクマゲーム」に巻き込まれていく……!
人知を超えた悪魔の力がいざなう、命を賭けた頭脳×心理戦!果たして父を殺した男の正体は!? 負けたら最期…極限の遊戯(デスゲーム)が始まる!!
文・スタイリング/坂口涼太郎
撮影/田上浩一
ヘア&メイク/齊藤琴絵
協力/ヒオカ
構成/坂口彩
前回記事「「今週会話したのはスーパーで『袋、大丈夫です』と言ったのが最後やな」と気づいたら実行する私の秘策【坂口涼太郎エッセイ】」>>
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