猫と一緒に暮らす人にとっては、家族のように大事にしている猫と1日でも長く暮らせるのは幸せなことです。その一方で、猫も飼い主も年齢を重ねていくことになります。

それでも、猫とともに暮らしてきた時間はかけがえのないものですし、シニアになった猫だからこそ、愛着もひとしおです。そこでミモレでは、シニア猫(ここでは10歳以上と定義)と暮らす人たちのお話に耳を傾けてみようと思っています。

今回は、21歳の時から猫を飼い始め、現在は4匹の猫と暮らす漫画家の赤星たみこさんが登場。現在まで縁あって歴代8匹の猫と一緒に過ごしてきました。現在の最長老は今年7月に20歳を迎える黒猫のギョロ。ギョロはオス猫ですが、8月に10歳になるキジトラの小町、6月に7歳になる三毛猫のヤク美と、白グレー猫のむふ子の3匹はメス猫。おじいさんと中年女子たちの暮らしぶりはどのようなものなのでしょうか。

 
現在、赤星さん宅で暮らす4匹の猫たち。黒がギョロ、キジトラが小町、三毛がヤク美、白グレーがむふ子(写真:赤星たみこさん、以下同)
<飼い主プロフィール> 
赤星たみこさん(60代)
1979年に漫画家デビュー。エコロジーと健康への興味が高じて、無理せず続けられるエコな健康生活術も提唱。代表作に「恋はいつもアマンドピンク」、「別れたら好きな人」など。現在は、officeYOUで「グランマ!」を連載。イラストレーターの夫・新野啓一さんと2人+猫4匹で暮らしている。
<同居猫プロフィール> 
ギョロ(19歳)
夫が雑木林の中でオスの小さな黒猫を見つけ、拾ってきた。目がギョロギョロしていたのでギョロと命名。特に大病を患ってきたことはないものの、年齢を重ねるにつれて少しずつ痩せ、弱々しくなってきた。しかし、赤星家の猫ヒエラルキーでは最上位に君臨しており、トイレでうんちをしても、砂をかけないでそのままにしている。


小町(9歳)メスのキジトラ猫。ボブテイル(ボンボンのような短くて丸い尻尾)が特徴。子猫の時から一緒だった小毬(通称コマ)が2013年に亡くなり、ペットロスから、同じ柄、ボブテイルの子猫を里親募集サイトで探して迎え入れる。コロコロとした体型で、愛嬌あり。名前はコマに近い名前をということで、小町にした。

ヤク美、むふ子(ともに6歳)2016年にジャパニーズ・ボブテイルのそら吉が亡くなって猫が2匹になってしまい、夫と「もう1匹ほしいね」という話になる。近所の知り合いのところで猫が生まれたと聞き、夫が見に行くことに。白グレーの子猫だけにするつもりが、人懐っこい三毛の子猫にも情が移ってしまう。「最高5匹飼っていたこともあるんだし、3匹も4匹も同じ!」ということで、2匹とも迎え入れる。どちらもメスで、ヤク美(三毛)は物怖じせず、フレンドリー。むふ子(白グレー)は臆病で、人が来るとすぐに隠れる。ヤク美は、以前飼っていたヤクという猫の名前を、むふ子は、同じくムーとふふみという猫の名前の受け継ぐ。


<歴代猫プロフィール> 
小毬(20歳没)、ヤク(19歳没)
1993年に、赤星さんの家の庭で発見された子猫たち。ネズミみたいに小さくて死にかけているところを迎え入れる。小毬の由来は、「困りもの」になりそうだったからで、ヤクの由来は死にかけて全然動かなかったので、「厄払い」と「躍動」の意味を込めてヤクに。どちらも思い出深い大切な猫だが、特にコマは赤星さんにとって特別な存在。2012年にヤク、13年にコマが亡くなる。


ムー(17歳没)1994年に、「貰い手がなければ処分する」といわれて引き取った子猫。当時の村山富市首相のような長い眉毛だったので、ムーと名付ける。2012年、バセドウ病で亡くなる。

ふふみ(5歳没)1997年に近所のスーパーの駐車場で拾った白グレーの猫。ちょうど赤星さんが子宮がんの手術を受けた頃で、再発の心配がなくなった5年後の2002年、赤星さんの出張中に急逝してしまう。赤星さんの厄を全部持って天国に行ってくれたのかもしれない。

そら吉(10歳没)2006年に、仕事などで縁があったブリーダーのもとから来たジャパニーズ・ボブテイル。ショーに出すには尻尾が短すぎるという理由で、赤星さんの元に。16年に猫伝染性腹膜炎で亡くなる。

私が猫を初めて飼ったのは21歳の時。知り合いの漫画家さんが拾った猫を1匹引き取ったのですが、ペット禁止の物件に引っ越したあと、内緒で飼っていたのが大家さんにバレてしまい、泣く泣く実家のある宮崎の知り合いに引き取ってもらいました。

結婚して、1993年に家を建てた時、新居に傷がつくのは嫌だけど、夫と「いつかはペットを飼いたいね」と話していました。でも、引っ越してきて1ヶ月も経たないうちに、ネズミのように小さくて死にかけている子猫2匹を庭で発見してしまいました。これがコマとヤクです。仕事に来ていたアシスタントさんにも協力してもらって胸元で温めてもらい、ミルクをやったり、病院に連れて行ったりしているうちに少しずつ元気になっていきました。

 

この2匹は私たちに恩義を感じてくれているのか、私や夫が何をしても怒らないし、本当にいい子でした。中でも、コマは私のことが好きで好きでたまらなくて、私にとっても女神のような、特別な存在になっていきました。他の歴代の猫たちも、もちろんかわいいし、亡くなった時は悲しかったのですが、コマが亡くなった時は、立ち直れないくらいのペットロスになってしまったのです。

赤星さんにとって、ひときわ特別な存在だったコマ。美猫で、死にかけのところを拾ってくれたことに恩義を感じていたのか、赤星さんにとても懐いていた

そこで、コマちゃんとそっくりなキジトラ柄で、尻尾の短い猫を里親募集サイトで探しました。そうして迎え入れたのが、小町です。でも、小町はコマちゃんではないので、「コマちゃんはこんなことをしなかった」などというように、つい比較してしまう自分が嫌でした。コマにも小町にもかわいそうな話で、葛藤が続いたのですが、ある時、「比べてしまうのはしょうがない」と開き直って、自分を受け入れるようにしてから、少しずつ克服。その後、小町ちゃんの良さも受け入れていけるようになったんです。

コマに似ている猫として迎え入れた小町。でも今は、コマと比べるのではなく、違う猫として受け入れ、今はきちんと違う猫として愛している
 
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