『ドント・ウォーリー・ダーリン』
砂漠の真ん中にある整然とした住宅街に、立ち並ぶのはプール付きの邸宅。カラフルなクラシックカーで出勤の夫たちを、キスで送り出す華やかな妻たち。インテリアをピカピカに磨き上げ、ディナーを入念に仕込み、バレエで美しさを保ち……同じ会社で働く人々のコミュニティ「ビクトリアシティ」で、愛する夫ジャックと絵に書いたような幸福の日々を送る主婦アリス。
そんなある日、「ここにいてはダメ」と言う言葉を残して自殺した隣人の妻マーガレットの遺体が何者かに回収され、事件がなかったことにされるのを目撃。奇妙なフラッシュバックとともに、街に違和感を覚え始めた彼女は、「行ってはいけない」と言われる場所に足を踏み入れ……。
映画が描く世界はファッションからインテリアからめちゃめちゃおしゃれで、まさにこれは理想の幸せ! と言う感じなのですが、後半にじわじわと見えてくるこの街の秘密ーーーミソジニー溢れる「物事のあるべき姿」「生物学的な運命」などの言葉や、理想の夫の正体に戦慄します。
女性がよく言われる(そしてついうっかり、言われることを夢見てしまう)「僕が君を幸せにしてあげる。君は何も心配しないでいい」という言葉は、繰り返し言われるうちに暗示のように思考を停止させ、現実を見つめる能力を奪います。結局のところ、自分の幸せは「誰か任せ」にしていいことはありません。
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