作家・ライターとして、多くの20代~40代の男女に「現代の男女が抱える問題」について取材をしてきた佐野倫子。その赤裸々な声は、まさに「事実は小説より奇なり」。社会も価値観も変化していく現代の夫婦問題を浮き彫りにします。

今回お話を伺うのは、「カードステイタスや航空会社のマイルに夢中」な夫を持つ佐和子さん。いわゆる「ポイ活」をはじめとしたライフハックが高じて趣味になっているならばむしろいいことでは? と取材を始めましたが、どうやら家族には葛藤と問題があるようで……?

 
取材者プロフィール
 佐和子さん(仮名):40歳、派遣社員、お子さんは小学生ふたり。
武志さん(仮名): 42歳、美容クリニックに勤める皮膚科のドクター。

  
 


高収入ドクターから渡される生活費はマイル&ポイント支給!?


「夫は皮膚科医として郊外のクリニックで働いています。いつかは開業したいと口では言っていますが、あまり愛想が良くないし、横柄なところもあって、独立は向いていないと密かに思っています。

勤務先のクリニックがコロナ禍をきっかけにオンライン診療を導入して、時間に余裕ができたんです。今のリズムが気に入ってるみたいで、開業は面倒と思い始めたのかもしれません」

取材前のやり取りで、「妖怪マイレージ男なんです」と自虐的に語っていた佐和子さん。航空会社のマイルを貯めているならば、特典航空券を取れるなど家族にもメリットがあるはず。それなのに困っているとはどのような状況なのかでしょうか。

「クリニックのドクターのお給料ってどのくらいだと思いますか? 私は夫のお給料を知らなくて……。私に支給されるのは食費と生活費として『12万円分のポイントやマイル』と決められています。ネット上でマイルやポイントを使い、どうしてもカバーできないときのみ、マイルと合わせて12万円分を超えない範囲、最高2万円まででクレジットカードを切るように指示されています。マイルなんて役に立たないシーンも多くて、学校の集金や習い事の費用、子どものお小遣いなどは現金が必要だと主張しても認めらません。私もフルタイムで仕事を始めて、なんとか現金を確保して家計を回しています」

ざっくばらんに家計のお話が出ました。さっそく聞く方も率直に「武志さんのやり方に同意をしていないということですね?」と尋ねます。

「生活費マイル支給はひとつの要素で、夫の家族に対する姿勢にモヤモヤしている部分も。例えば夫は平均をゆうに超える収入があるはず。それを可能にしたのは義両親が畑を売って私立医学部に入れてくれたおかげなのに、自分の子どもにかかるお金は最低限にしたいといってきかないんです。

家にお金がないならその中で、というのはわかりますが、自分はへそくりを作って、お金をかなり自由にしている。それなのに子どもの教育費はかけたくない、すべて公立マスト。大学も国立しかお金を出さないから、それなら医学部は無理だろう、だから諦めろと言います。

『オレが魂削って稼いだ金、無駄に使うんじゃない』が口癖ですが、申し訳ないけれど魂削っているほど仕事に打ち込んでいるようには見えないんです。そういうのって長く一緒にいればわかります。働くって多かれ少なかれ大変なことだし、彼だけが特に大変とは思えません。今の職場は週休2.5日、残業一切なし、高収入。専門職で恵まれていて、派遣社員としては羨ましい環境です」

どうやら佐和子さん、生活費云々だけではなく、夫の家族に対する姿勢にも落胆している様子です。