で、この「むき出し」という単語が出てくると、他の要素もむき出しという質感を重視して決めれば良かった。わかりやすい例を挙げると、天井です。それまでは壁と同じ白いクロスで仕上げられていたのを、「躯体現し」というコンクリートをそのままむき出しにする仕様に変更。クロスを貼らない分、予算も下げられるので一石二鳥でした。

 


照明も配管がそのまま見える形にし、余計なシェードはつけず、シンプルな裸電球をむき出しにすることで、全体のトーンを揃えます。ただし、あまりにゴリゴリのインダストリアルだとやり過ぎ感が出てしまうので、壁はオーソドックスな白いクロスのまま。一面だけコンクリート風のアクセントクロスを貼ることで、ちょっとポイントをつけました。

 
リノベーションの前と後、それぞれの室内。
 
 

フローリングに関しては無垢材も捨てがたかったのですが、それまで住んでいた部屋が同じく無垢材で、ちょっとしたことですぐ傷がつくのがストレスだったのもあり、ある程度、雑に住んでも胸が痛まない合板にしました。このあたりの審美性と実用性のバランスは人によって様々だと思いますが、基本的に適当な性格の僕にとっては、生活に密着したものは雑に扱っても平気かどうかが優先。実際、合板だとちょっとソファがズレたり物を落としても、ほとんど気にならないので楽ちんです。

 

逆にここはこだわって良かったと実感しているのは、洗面台です。レストランやホテルなんかもそうですが、洗面台が垢抜けていると、それだけでなんだか全体も洗練されたような印象に。部屋の印象を決める意外な名脇役が洗面台だというのはリノベーションをする前から思っていました。

まず避けたかったのが、収納も兼ねているキャビネットタイプのミラー。生活感の出るものを隠せて便利ではあるのですが、どうしても前に張り出す形になるので、少し野暮ったくなる印象が拭えませんでした。なので、鏡はできるだけシンプルでフラットな形状のものをセレクト。木製のカウンターに陶器の洗面器を合わせ、壁面はタイル張りにして、ちょっとカフェっぽく。

リノベーション後の洗面台。

ただし、これだけだとちょっとナチュラルテイストすぎて、メインの部屋とバランスがとれない気がしたので、ここでも配管とトグルスイッチを合わせて、インダストリアル風味をちょい足し。結果、ちょっと個性的な洗面台に仕上がって、いつもの歯磨き&洗顔タイムがより楽しくなりました。

あと、地味に好きなのが洗濯機置き場。もともとは白のクロスに囲われた殺風景な空間だったのですが、クロスを替えるだけなら特に予算も変わらないので、上部をモルタル風、下部をサブウェイタイル風のクロスにしました。本当はキッチンの壁をサブウェイタイルにしたかったのですが、本物のタイルを使うと、そこそこいいお値段がするため見送りに。あくまでクロスとはいえ、ここで取り入れられたことで、少し無念を晴らせた気がしました。

 

自由にリノベーションができるといっても、実際のところはひたすら予算との睨めっこです。もしも僕がデヴィ夫人なら気前よく好き放題にやるのですが、残念ながら大統領に見そめられる人生は今のところやってこなさそうなので、地味なところで工夫するしかありません。

その上で、自分の決めた選択を信じ、これがベストだったと愛し抜くこと。自己肯定感というものがまるでわからなかった僕にとって、それは初めて知った自己肯定感の高め方だったのかもしれません。

 

『自分が嫌いなまま生きていってもいいですか?』
講談社・刊 1430円(税込)
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生きづらさを抱える人たちから、共感の声多数! “推し本”著者による人気連載が書籍化。

本屋に行けば「自己肯定感」をテーマにした書籍がずらりと並ぶ昨今。
でも、実際に自己肯定感の低さで悩む人にとっては、自分を愛することの大切さは理解しつつ「そんな簡単に好きになれてたら苦労しないよ…」というのもまた偽らざる本音でしょう。

本書では、自分が嫌いなことには誰にも負けない自信のある(?)著者が、

◆「自分嫌い」を決定づけた、幼い頃からのコンプレックスや苦い経験の数々
◆大人になって日々直面する“自己肯定感が低い人あるある”
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◆そして辿り着いた「これ以上、自分が傷つかないための方法」

を、面白おかしく、ときに切なさも交えて綴ります。

自分のことが好きになれなくても、人に優しくすることはできるし、幸せにもなれるはず。「なりたいものになれなかった」「誰にも選ばれなかった」そんな自分と、折り合いをつけられずにしんどさを抱える人たちの背中に、そっと手を添える一冊です。


構成/山崎 恵
 

 

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