人間は完璧ではない。絶対にダメなところがある
そして、信じるといっても、すべてを信じるというのは違うと思っています。そうではなく、この部分だけは信じる、と決める。選手たちのことも、日常生活やプライベートまでコントロールをしようとは思いませんでした。すべてを信じようとしたら無理があります。
「このことに関しては信じている」
24時間すべての生活を見ているわけではない。だから、すべてを信じることはできません。ただ、このことだけは絶対に信じている。その思いを曲げない。
すべてを信じようとすると、齟齬(そご)が生じるのです。人間は完璧ではありません。絶対にダメなところがあるのです。逆に、行動でも、人柄でも、その人ならではの良いところもある。
「お前のホームラン数、このくらいは行くから。絶対に行くから」
と言って信じたら、もうあとは問わない。酒を飲もうが、夜更かしをしようが、本人に任せる。信じてもらったことを最後までやり遂げるために、本人が考えるからです。信じてもらって、少しは制限するようになるからです。これが、結果を変えるのです。
「これをオレは信じてるんだ。絶対、お前よりオレのほうが信じてるんだ」
ということが相手に伝われば、いろんなことが起こっていく。これこそが、信じ切るパワーなのです。
家族は信じるより、ただ愛すればいい
家族に関しては、もしかすると、信じようとする必要はないのかもしれません。なぜなら、ただ愛すればいいから。信じているとか、信じられている、というのは、家族の場合は、その後のことだと思うからです。
何があっても、自分は子どもだったり、パートナーだったりを愛しているという気持ちさえあれば、それはいつか信じ切る力に代わっていくはずです。そのベースになっているのは、本気で愛しているかどうかです。
僕は家庭を持っていませんので、選手たちが家族だと思っていました。愛するという言葉は、陳腐なのかもしれませんが、そのくらいの気持ちを持って物事に向き合っていました。それが、いずれどこかで信じ合える瞬間につながることを願っていました。
また、野球はちょっとうまくいかないけど、人としては信じている、という場合もありました。
家族は近すぎる難しさもありますが、「これ以上、大切なものはない」という感覚さえあればいいのだと思っています。
『信じ切る力 生き方で運をコントロールする50の心がけ』
著者:栗山英樹 講談社 1760円(税込)
大谷翔平の二刀流も、WBCの世界一奪還も、「信じ切る力」がなければ実現しなかった。信じること、信じられることによって、毎日が変わり、生き方が変わる。その結果、人は大きく成長していく。運とは、日々の行動の積み重ねで、コントロールするもの。神様に信じてもらえる自分になるしかない。
ダメな自分に向き合い、相手にただ尽くし、日常のルーティンで「信じ切る力」を磨き続けた栗山英樹の、真摯で“実践的”な人生論。
野球を知らない人にも、中学生にも、ビジネスパーソンにも、すべての人に読んでほしい1冊です。
撮影/塚田亮平
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