利用者にパイルドライバーを決めたくなる瞬間

「心の中でだったら、いくらでも悪態をついていい」。認知症高齢者と日々向き合う介護職員の本音とは?_img0
 

認知症介護の仕事を続けることを決心した畑江さんは、徐々に仕事にも慣れ、利用者への対応もスムーズになります。とはいえ、何をされても平然としていられるほど達観しているわけではない模様。実際、介護施設での虐待行為のニュースを目にした彼女は、以下のように思っていました。

「実際に介護の仕事をしてみて思ったことは、『虐待は絶対にやっちゃいけないけど、正直気持ちはめちゃくちゃわかる』だ」

畑江さんは「介助中に叩かれたり引っ掻かれたり暴言を吐かれたりすると、確かにイラッとしている自分がいる」と素直に気持ちを打ち明けていますが、そんな彼女を誰が批判できるでしょう? 本書を読み進めると、むしろ「イラッとする」程度にとどめておけるのが奇跡と思えるほど、とても過酷な環境に身を置いていることがわかります。

 

「薬を飲むのが苦手な利用者が薬を床にペッと吐き出して、『苦いんだよ、このバカ女』と言ってきたとき。歩行が不安定な利用者に付き添っていて、手が離せないときに、『おい、茶ァ淹れろよ! いつまでやってんだよ、このノロマ!』と他の利用者に言われたとき。熱中症が怖い時期に、冷房嫌いの利用者から、『冷房切れよ! グズグズするな! キビキビ動かないと殴るぞ!』と怒鳴られたとき。……思い出すとキリがないが、『人の気も知らないでぇぇぇぇぇえッッ!!』と、業務中利用者にパイルドライバーを決めたくなった瞬間は、これまで何度もあった」