友情でも恋愛でもない、それでも支え合える
筆者がこの映画を観たキッカケは、SNSで、「恋愛ものに見えて全然そうじゃない」という口コミを見たからでした。伝説の朝ドラ『カムカムエヴリバディ』(NHK)で、たくさんの人が涙した安子と稔の究極の純愛。その安子と稔を演じたふたりが主人公ということもあって、ポスターを見た時から勝手に「恋愛ものなんだろうな」なんて思っていました。でも、どうやら違うらしい、と聞いて一気に興味が沸き、観に行ったんです。
始まってみると、恋愛ものだとかそうじゃないとか、そんなことを考えていたことすら忘れていました。あまりに主人公ふたりに色気がなさ過ぎて! (笑)。藤沢さんは、山添くんの部屋に上がった時、残り少なくなったスナック菓子をガサーッと口に流し込んだりする。山添くんは終始つっけんどんで、若干ひねくれもの。考えてみれば、友情でも恋愛でもない男女の絆が描かれる作品って、珍しいのかもしれません。
ただ、互いの状況を理解していることが、ふたりを強く結びつけているのです。友達というわけでも、ましてや恋人でもない。それでも支え合うこと、ともに生きることはできる。その関係は、「戦友」と言えるのかもしれません。
同性でも戸惑う、PMSの症状は人それぞれ
この映画では、自分の心と身体が思い通りにならない様が、克明に描かれます。冒頭で触れたように、藤沢さんのPMSは、会社を辞めざるをえなくなるほど、そして警察にお世話になるほど重いのです。
PMSでイライラし始めると、感情の抑制が効かず、目に入ることに引っかかり、人に当たってしまう藤沢さん。ある日、通っているヨガ教室で、他の生徒(女性)が言った何気ない一言に引っかかり、突っかかってしまいます。我に返った藤沢さんは慌てて謝ります。相手の生徒は、その様子に驚き、「疲れてるんじゃない?」と気遣いますが、藤沢さんはそれに対して、「勝手に決めないでよ!」とまたキレてしまいます。
同じ女性でも、PMSの症状は人それぞれ全く違います。だから、藤沢さんのような症状を見ても、同じ女性だからって、それがPMSからくるものだとはわかりません。藤沢さん自身も、自らの症状をどうにもできずに悩み続けています。筆者は女性で、PMSが重い方ではありますが、正直最初は藤沢さんがPMSでイライラして人に当たるシーンを見て、なんで抑えられないんだろう? と少し思ってしまいました。自分と違う症状を、そういうこともあるんだ、と理解するのって、なかなか難しいんですよね。でも、だからこそ、こういう症状もある、と知ることって、すごく意味のあることだと思うのです。
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