前回の介護保険制度の改正ポイント


介護保険制度が創設された2000年4月には184万人だったサービス利用者は、2024年1月には614.5万人となり、3.3倍に増えました。それに伴い、介護保険の総費用も3.6兆円から13.8兆円(2023年度)にまで膨れ上がっています。

多くの税金が投入されている介護保険制度ですが、今年は団塊の世代が75歳以上になる「2025年問題」へ向けた最後の改正ということで、早くから注目を集めてきました。ところがいくつかの大きな事案は見送られることが決まったのです。

ここで少し、前回の改正を振り返ってみましょう。

相談者の恵美子さんとそのご友人の家族が影響を受けたという2020年度改定(施行は翌2021年)では、高所得世帯を対象に、高額介護サービス費の上限額が引き上げられました。介護サービスを受ける際は、1ヵ月に支払った自己負担の上限額を超えたときに超過分が払い戻されますが、この自己負担額がアップしたのです。 
 

 


対象となったのは、年収約770万円~1160万円未満(課税所得が380万円以上690万円未満)の世帯。該当世帯は、それまで一律4万4000円だった自己負担限度額が9万3000円に変更されたのです。さらに年収約1160万円以上(課税所得が690万円以上)の世帯においては、14万100円に変更されました。

これ以外に、介護保険施設の入居者やショートステイを利用する低所得者の食費負担の見直しも行われました。

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2024年改正で変わった4つのこと


2024年改正で決定したのは、「①財務諸表の公表を義務化」「②介護情報基盤の整備」「③居宅介護支援事業所による予防支援事業の開始」「④福祉用具におけるレンタルと購入の選択化」の大きく4点です。

① 財務諸表の公表を義務化介護サービス事業所の詳細な財務状況を「介護サービス情報公表システム」で公開することが義務付けられました。情報の見える化により、私たち利用者は事業所の経営状態や賃金まで把握できるようになり、施設選びを行う際の参考となる基準が1つ増えました。

② 介護情報を管理する基盤の整備介護における各種情報を市町村が一元化し、電子情報として共有できる情報基盤の作成が決まりました。この基盤が整備されれば、自治体は地域の介護保険の実情を把握し、利用者はより簡単に介護情報を確認できるようになります。

③ 居宅介護支援事業所による予防支援事業の開始介護予防支援は、これまで地域包括支援センターから委託を受けた地域の居宅介護支援事業所が行っていましたが、改定によってセンターを通さず居宅介護支援事業所が直接実施できるようになりました。手間やコストの削減が背景にありますが、居宅介護支援事業所が要支援以下の高齢者に直接携わることは、介護する側にとっても嬉しい改正なのでないでしょうか。

④ 一部福祉用具のレンタルと購入が選択制に単点杖(松葉杖は除く)、多点杖、歩行器(歩行車は除く)、固定用スロープに限り、利用者がレンタルと購入を選択できる制度が導入されました。こちらも介護する側にとっては嬉しい改正です。

この他にも、介護サービス事業所にかかわるものとして、①介護職員処遇改善加算、②介護職員等特定処遇改善加算、③介護職員等ベースアップ等支援加算の3つが一本化されることが決まりました。この加算金額の見直しは、今後利用者の自己負担金額にも影響してきそうです。