日常にこそきらめきを見出す。俳優・坂口涼太郎さんが、日々のあれこれを綴るエッセイ連載です。今回のエッセイのタイトルは、「人間は2種類にわけられる〈後編〉」です。食べても太らない坂口さんが食の情熱を燃やす地方公演の夜はまだまだ続きます。

「プロフィール大嘘やん。虚偽の申告やん」知ってしまったがゆえに変わったものと変わらなかったもの【坂口涼太郎エッセイ】_img0
 

そして、迎えたなまはげ変身期の週末。今回は長野県上田でございまして、すでに友人各所から情報は収集しておりますのんや。宵越しの胃袋のことは考えないをモットーに、初日の夜は極上のサムギョプサルがいただけるという噂の「クイちゃん」という韓国料理屋さんへ。

店内には猫四匹が常連のおっちゃんかのような佇まいでくつろいでおり、その中のジュンコという猫は特にオモニ(お母さん)と仲良しで、オモニが何かを話したあとに「ねー、ジュンコ」と問えば、ジュンコは必ず「にゃあ」と同意。オモニが小さな畑ひとつ分のにんにくを鉄板にころころと敷き詰めて、一人で極上のサムギョプサルを焼いては「こうやって食べるんだよ!」とサンチュに巻いた肉を自動販売機に小銭を1枚ずつ入れるような手つきで私たちの口に投入してくれ、そのたびに私たちは大音量で「おいしい」と発声するマシーンと化していた。
 

 


上機嫌になったオモニは気がつけば店内に無造作に置かれていた太鼓を叩きだし、アリランを熱唱していて、ジュンコたちがその勇姿を神妙な面持ちのまま不動の姿勢で見守る姿を私たちはさらに神妙な面持ちで見守りながらマッコリを飲んだ。

色んな意味で満腹の私たちは何か壮大な演目を鑑賞したかのような食後感で心の底から出たごちそうさまをオモニに捧げて店を後にし、宿泊先のホテルに戻り、サウナ付きの大浴場に入って大量に投入されたサムギョプサルをゼロにしようと画策実践したのち、私の目に入ったのは体重計。あらあら、なんだかお久しぶりですね。お元気でしたか。久方ぶりにちょっくら乗せていただこうかしらん。失礼いたしまーす。

ぐるぐるとルーレットのように目まぐるしく変化する数字がピッというなんの感情もこもっていない乾いた音と同時に固まり動かなくなった。

「68」

あれ、ん?

なんだかちょっと、ん?

あなた、壊れていらっしゃる? そんなはずは、ん? ないと思うのだけど。

目の前で固まっている「68」という数字が一体何を指し示しているのか理解できずに、小さく白い正方形の上で気をつけの姿勢のまま全裸で固まっていた。

だって、私の自己認識体重は「58」キロ。公式プロフィールにもそう記載されていて各所へお配りしているのだけれど、大嘘やん。虚偽の申告やん。10キロ増やん。ていうか、全然カロリー消費燃焼できてないやん。何が食べても消失やねん。豊富に貯蓄されとるやん。

 
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