脚本担当の吉田恵里香さんも、「結婚して家庭を守る花江は、もうひとりの主人公のつもり」だとおっしゃっていましたが、たしかにそうですよね。寅子と比較してしまうと、「女学生のうちに結婚するのが夢だった」と語る花江のことを“普通”だと思ってしまうけれど、花江はその夢を叶えるために努力してきた。異性へのアンテナを張っていたからこそ、直道の良いところを見つけて恋をすることができたんです。花江のことだから、好きな人(=直道)以外の男性と、妥協しての結婚はしなかったんじゃないかな。


寅子のように、結婚せずに働く覚悟をしている女性が“すごい”と思われがちだけれど、家庭に入るのだって大変。「どんな道でも、女が好きな方いくのは大変なのよ」という花江の言葉が、令和を生きるわたしたちの胸にも突き刺さります。

女性の社会進出を題材にしたドラマだからといって、その反対に位置するキャラクターを凡庸な奴に見せない。結婚を選ぶ女性も、ただ流されているだけじゃなく、自分の意志で人生を切り拓いてきたんだということを教えてくれる吉田脚本、あっぱれです!

 

自分にとって耐えられる地獄を選んでいく


綿谷りささんの小説『亜美ちゃんは美人』(文藝春秋・刊『かわいそうだね?』併録)に、こんな台詞が登場します。

「正しくなくても、幸せじゃなくても、どうしてもやりたいことがあるなら、時には貫いてもいいんじゃない?」

人生とは、耐えられる地獄を選んでいくことなのかもしれません。結婚しても、しなくても。子どもを産んでも、産まなくても。仕事をしても、しなくても。どんな状況でも、何かしらの地獄は存在します。悩みのない人なんて、どこにもいない。だからこそ、「これなら、何があっても踏ん張れる」と思える世界で、生きていくしかない。そして、その選択を正解に変えていくことが、わたしたちにできることなのかもしれないなと思いました。


寅子の人生が、正しいのかはまだ分からない。ただ、もしもはる(石田ゆり子)の言うことを聞いて、流されるままに結婚していたら、寅子は地獄を見るたびに、「こんなはずじゃなかったのに」と誰かのせいにしてしまっていたと思うんです。

その点、自らの意志で進んだ道は、誰のせいにすることもできない。寅子は、「明律大学女子部」に入り、さまざまな地獄に出会うことでしょう。結婚して子どもを産み……という人生を歩んでいたら出会わずに済んだ困難が、道を阻んでくるかもしれない。それでも、自分で選んだ地獄なら、生き抜いていけるはず。寅子が、すべての選択を正解にするために奮闘する姿を、ともに追いかけていきましょう!

 

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