カレーも歌舞伎もボーダレス。
3月には京都・南座で中村壱太郎さん、中村隼人さんと平成世代の歌舞伎俳優で公演を行った右近さんは、同世代の仲間をかけがえのない宝物だと感じているといいます。
「同じ時代に生まれ、同年代で舞台を作る仲間が存在し合っていること自体が奇跡であり、宝物。僕はあまりライバル心がなくて、純粋に応援している感じ。別の舞台で経験を積んだ彼らとまた共演する時に、彼らがどのように変化して、一緒に演じた時に自分がどう感じるのか、というのがすごく楽しみなんです。歌舞伎は一人では決してできないものだけど、一人ひとりが、『自分ひとりでしょって立つ』という気持ちでいたら、みんなが集まった時にすごくよくなると思うんです」
個性や持ち味の異なる俳優たちが集まって化学反応が生じ、新たな魅力が宿るのは、まるで“あいがけカレー”のようだと話す右近さん。
「僕はあいがけカレーが大好きなんですけど、Aというカレーだけでも魅力的、Bというカレーも素晴らしい、それぞれの魅力が掛け合わさったら、もっとすごい味わいになるはず。1+1が2じゃなくて、魅力が何倍にも膨れ上がるんです」
右近さんは、バリエーションの幅が広いところも、歌舞伎とカレーの共通点の一つと力説します。
「カレーにはカレーうどんや、中華風カレーがあるようにボーダレス。カレー好きやカレーに関わっている人に『カレーってなんですか?』って聞くと、全員言うことが違うんですよ。実態はつかめないんだけど、確かにそこにあるのはカレーなんです。歌舞伎も、『ルパン三世』や『ワンピース』みたいな新作歌舞伎があるけど、じゃあ何をもって歌舞伎というのか? 歌舞伎役者がやれば歌舞伎なのであって、厳密な定義がない。だからどちらもいろんなアレンジができて、バリエーションが豊かなのだと思うんです。そう考えると、やっぱりカレーと歌舞伎って似ているんですよね。カレーも歌舞伎も、みんなこだわりがあって、自分たちの魅力を大切にしている。そんなところも大好きなんです」
歌舞伎もカレーも奥深く、アレンジは無限大。右近さんはそんなところに魅了され、探求を続けているようです。
発売日:2024年4月26日
定価:2200円(税込)
主婦の友社
團菊祭五月大歌舞伎
昼の部「鴛鴦襖恋睦(おしのふすまこいのむつごと)」遊女喜瀬川/雌鴛鴦の精役、『極付幡随長兵衛』雷重五郎役で出演。
2024年5月2日(木)~26日(日)
歌舞伎座
昼の部 11時~
夜の部 16時30分~
【休演】8日(水)、16日(木)
六月博多座大歌舞伎
昼の部「身替座禅」太郎冠者役、夜の部「東海道四谷怪談」お岩/小仏小平/佐藤与茂七役で出演。
2024年6月2日(日)~17日(月)
博多座
昼の部 11時~
夜の部 16時~
【休演】10日(月)
いずれもチケット発売中
スタイリスト/三島和也(tatanca)
ヘア&メイク/STORM(Linx)
撮影/山本倫子
編集・取材・文/吉川明子
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