仕事も家庭も「私らしく」が一番
年を重ねるからこそ得られる充実感
「相変わらず忙しい毎日を送っているわ。仕事は増える一方ね」と微笑んだのは、フランスのフレグランスメゾン「アニック グタール」の調香師、カミーユ・グタール。来日は2年ぶりになる。
「昨年、NYにブティックを開いたのよ。今年はマディソン・スクエアにもオープンを控えているから大忙し!」
母であり、創業者でもあるアニック・グタールの世界観を、調香師のイザベル・ドワイヤンと一緒に1999年から引き継いでいる。小さいときから香りとアートが身近にあったカミーユ。父は画家、祖父は音楽家、デザイナーやスタイリスト、コスチュームデザイナーなどファミリーは芸術一家。自由な発想と環境で育ったカミーユにとって、香りはとても近しい存在だった。
「母が働くラボラトリーで、フレグランスを試すことを繰り返しながら何時間も過ごしていたわ」
のちにカミーユはフォトグラファーの夢を抱き、写真スクールで学んだ後、プロのフォトグラファーとしてのキャリアを歩み始める。そんな矢先に母が他界。母の意思を継ぎ、「アニック グタール」を続ける決心をする。
友人や家族と過ごす時間は
かけがえのない宝物
インタビュー中も常に笑いとユーモアを交えながら話すカミーユ。今日はプライベートについても少しだけ話してもらった。家族や友人について話を聞くと、一息ついてから“彼らは私にとってかけがえのない存在”という。
「目まぐるしいくらい忙しい毎日だけど、できるだけプライベートな時間をつくるように努力しているの。親しい友だちとご飯を食べにいったり、仕事の後に美術館やコンサートへ出掛けたり……。皆さんと同じようなことをしているわ。でも、家族と過ごす時間が一番多いかしら」とカミーユ。
「次女のマイア(12歳)は、甘えん坊なの。子猫のように甘えてくるけれど、強い意思も持っていて。この前も『ピアノを習いたい』とお願いされたわ。どれだけピアノが好きなのかを私たちに演説し、どこで覚えてきたかわらかないけど、その場でピアノを弾いてみせたのよ。とても驚いたわ!」と嬉しそうに話す傍ら、「ね、前より大きくなったでしょ」と長女・ミラ(15歳)の写真を見せてくれたカミーユ。このときばかりは「母」の顔。
こういう日々の生活が香りのクリエーションに繋がっているのだろう。イザベルと築いた新生「アニック グタール」は、きめ細かな優しさと柔らかな香りを奏でている。
生活が単調にならないよう
少しの変化を楽しむ
他のフレグランスメーカーと同じ香料を使っていても、カミーユのつくった香りはどこか独創的。同時に、柔らかく肌を包み、幸せな気持ちになれる……。これらのインスピレーション源はどこからくるのだろう?
「特別な“何か”をしているわけではありません。敢えて言うなら“単調”にならないようにしているくらい。日々の生活の中でも変化をつくり、それを楽しむようにしています。この前も友人から『展示会に一緒にいかが?』と誘われて、行ってきたの。よい作品に出会えたし、とても素晴らしい展示会だったわ」
では、香りのインスピレーション源はどこから?
「よく聞かれるのですが……“降りてくるのを待つ”という表現が一番適しているのかもしれません。心をオープンにして、いろんなことに関心を持つことが大事。それらがアイデアとなって湧いてくるのです」と、モノづくりのこだわりは、まだまだ続く。
「自分に誠実であること。好きな香料、納得できるモノでつくりたいと思っています。たとえば、『今、流行っているから』『値段が安い』という理由で、私は香水をつくりません。誠実に香りと向き合い、夢を与えていかれたらいいなと思っています」
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