「よく鏡を見て、よく考えてみるべき」。現実に目覚めた瞬間

相澤さんは受験勉強に集中できる環境を求めて東京から埼玉の田舎へ引っ越し、2回目の司法試験に挑みますが、またしても不合格に。経済面ではホームレスの炊き出しに並ぶほど困窮してしまいます。

父親から100万円の援助を得て挑んだ3回目の司法試験も不合格となり、受験資格も消失。それでも司法の道を諦めきれない彼女は、予備試験を受験して再び受験資格を得るという道を選びます。

これ以上家族に甘えられないと考えた彼女は、生活費を捻出するため有名ホテルの採用面接に挑みますが、そこで残酷な現実を突きつけられるのでした。

国際線キャビンアテンダントから生活困窮者へ。生きづらさを抱える「高学歴難民」のたどり着いた先は?_img0
 

面接官だった女性が、CA出身だと聞いて嬉しくなりました。面接が終了し外に出ると、フロントには著名人の姿がありました。格式の高いホテルで仕事ができるなら、ここに勤めるのもアリか……と、辺りを見回しながら歩き始めた時、

「ちょっといいかしら」

元CAの面接官に呼び止められたのです。
 

 


「あ、はい」

彼女は私を、ホテル内の大きな鏡の前に誘いました。

「先輩だから、率直な意見を伝えてあげたいと思って」

面接の時とは打って変わって厳しい目つきでした。

「私に採用の可否を決める決定権はないの。だからわからないけど、あなたが採用されることはないと思う」

「え?」

「あなた、鏡を見てきた?」

女性は私に鏡を見るように促しました。

「今は身だしなみなど気にしていられないと思うけど、10年前、その姿で飛行機に乗れたかしら?」

私はドキッとしました。

「あなたとても30代には見えない。ブラウスのボタンも取れてるし、スーツのボタンも取れてる。ストッキングは伝線してるし、そんな姿で面接に来た女性はいません。接客業ではありえない。よく鏡を見て、どんな仕事が向いているか、もう一度よく考えてみるべきよ」

そう言って女性が立ち去った後、私は全身が映る大きな鏡の前にしばらく呆然と立ち尽くしていました。

とにかく仕事をしなければと、細身のスーツに無理やり身体をねじ込んだ結果、ボタンははじけ、ストッキングも破れ、すでに美容院に行かなくなって2年以上が経過した髪の毛は白髪だらけでした。

私は明らかに場違いなところにいて、きっと、第三者が見たら、炊き出しに並ぶ姿の方が私にマッチしているのだと、ようやく現実に目が覚めたのです。