趣味は本屋に行くこと。本は僕のそばにずっとあった


栗山:僕は子どもの頃から野球をやっていたんですが、父親がすごく厳しい人だったんです。本当に「巨人の星」の星一徹みたいな。ちゃぶ台ひっくり返す系の。
僕、プロに入ったとき、合宿所の公衆電話で敬語で喋っていて。「こうでこうでこうなんですよ」と話していたら、まわりの選手たちに「おまえ、誰と喋ってたの?」と聞かれて「親父と」と言うと、「親父に敬語使うのか」と驚かれて。
プロになってからも、父親と喋るときは敬語を使ってたくらいの怖い人だったんです。ただ、その父親が唯一、なんでも許してくれたのが、本でした。本だけは好きなだけ買ってくれた。それ以外は、めちゃめちゃ厳しい人だった記憶しかありません。
本格的に読み込むようになったのは、大学生くらいからなんですけど、本は僕のそばにずっとあったんですよね。

「本がなかったら僕は壊れていたかもしれない」栗山英樹の人生を救った本と書店への思い_img0
 

今は、僕は本屋に行くのが趣味だったりします。しょっちゅう本屋にいますよ。また、選手たちが入団してくると、これを読みなさい、などと、よく本を贈っていました。今、書店経営は大変だと聞いていますが、少しでもお役に立てればと思います。

経営者もそうだと思うんですが、監督をやってると、最終決断をしないといけないわけですよね。もちろん情報を入手したり、いろんな人たちに話を聞いたりするわけですが、最後は自分で決めなきゃいけない。そういうとき、すごく孤独になるんですが、ここで本が生きてくる。
歴史はデータだ、と僕はずっと言ってきました。誰かがこうやって考えてこういうふうにすると、こういう結果になる。そういうデータがずっと残っていると僕は思っていて。
僕と同じようなことで困っていた人が歴史上にもいたはずで、そういう事例を本の中に探しにいくんです。
10年間、ファイターズの監督をやらせてもらいましたけど、めちゃめちゃ本をたくさん読みました。そして、「あ、こうした方がいいんだ」みたいなストーリーに出会って、すごく救われたんです。

「本がなかったら僕は壊れていたかもしれない」栗山英樹の人生を救った本と書店への思い_img1
 
 


北海道の自宅には図書館が


松信:その買われた本は今、どちらにありますか

栗山:そんなに真剣に聞かないでください(笑)。今、僕は北海道に住んでいるんですが、倉庫の上を図書館にして、本をそこに置いています。
 

栗山さんは2002年、北海道の栗山町に少年野球場を作った。それが、「栗の樹ファーム」。ログハウスが隣接し、栗山さんがアメリカで買ってきた野球グッズのほか、日本の名プレーヤーが使っていたバットやグローブなどが展示されている。その近くに、栗山さんの自宅や倉庫がある。
なぜ、北海道だったのか。なぜ、少年野球場だったのか。そして実は、この北海道移住こそが、栗山さんの人生を大きく変えていくことになる。奇跡のストーリーがあるのだ。
栗山さんらしい、夢のようなエピソードは著書『信じ切る力』に詳しい。また、本書では秋の素晴らしい青空のもとで、栗山さんが「栗の樹ファーム」で過ごしているカラー写真が掲載されている。愛犬と戯れる姿も!

 

松信:一般の方も見ることはできるんですか? それは、さすがにできない?

栗山:いずれ、子どもたちが野球をしに来たときに見られるようにしたいですね。野球の本もたくさんありますので。難しい本もありますけど、漫画もたくさんあるんです。
WBCの前、たくさんの野球漫画を改めて買って読んだんですよね。そうしないと神様は勝たせてくれないんじゃないか、みたいに変な追い込まれ方をしていたので(笑)。普段はあまり漫画は読まないんですが。
あ、あと僕は大学に籍を置いているので、大学の研究室の本棚にもいっぱいあります。


5月17日公開「監督、いい本ないですか?」選手にも聞かれる球界きっての読書家・栗山英樹流「本の贈り方」へ続く
 

「本がなかったら僕は壊れていたかもしれない」栗山英樹の人生を救った本と書店への思い_img2
 

『信じ切る力 生き方で運をコントロールする50の心がけ』
著者:栗山英樹 講談社 1760円(税込)

大谷翔平の二刀流も、WBCの世界一奪還も、「信じ切る力」がなければ実現しなかった。信じること、信じられることによって、毎日が変わり、生き方が変わる。その結果、人は大きく成長していく。運とは、日々の行動の積み重ねで、コントロールするもの。神様に信じてもらえる自分になるしかない。
ダメな自分に向き合い、相手にただ尽くし、日常のルーティンで「信じ切る力」を磨き続けた栗山英樹の、真摯で“実践的”な人生論。
野球を知らない人にも、中学生にも、ビジネスパーソンにも、すべての人に読んでほしい1冊です。


文/上阪 徹
撮影/杉山和行(講談社写真映像部)
 

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