ゴールデンウィークで多くの人が休暇や旅行を楽しんでいる中、外国為替市場では急激に円安が進んでいました。このまま円安が止まらないと、再び多くの製品が値上がりするのは確実です。円安にはメリットとデメリットの両方があるのですが、ここまで円安が進むと、私たち庶民にとってはデメリットの方がはるかに大きくなってくるでしょう。世論の一部からは円安を止められないのかという声が上がっていますが、実現できるのでしょうか。

GW中も止まらぬ円安。日銀が金利を上げたくても上げられない2つの理由_img0
5月2日の対ドル円相場。写真:AP/アフロ

今、円安が進んでいる最大の理由は、多くのメディアが指摘しているように日米で金利差が生じていることです。米国の金利は約5%であるのに対して、日本の金利はゼロに近い水準となっており、米ドルで運用した方が得ですから、多くの投資家がドルを購入しています。つまりドルを買って円を売る取引が多いので、為替は円安となります。
 

 


米国の金利が高く推移しているのは、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)が、金利を高めに誘導しているからです。米国と日本はリーマンショック後の不景気に対応するため、中央銀行が積極的にマネーを市場に供給する量的緩和策を実施してきました。

米国ではその効果が発揮され、景気が回復したことから、副作用が顕在化する前に量的緩和策からの撤退を決断しました。量的緩和策でバラ撒いたマネーを回収し、インフレ(物価上昇)を抑えるために金利を引き上げているのです。ところが日本は量的緩和策を実施しても景気がよくならず、今でも事実上、緩和策を継続しています。3月の金融政策決定会合で日銀は方向転換を表明したものの、「引き続き、緩和的措置を継続する」とも説明していますから、低い金利が当分、続くことになります。

米国は景気が過熱しないよう金利を上げて引き締めようとしているのに対して、日本は景気が良くならず、低金利を継続して経済を刺激しようとしています。この金利差の違いが今、生じている円安の主要因というわけです。政府は連休中、過度な円安を阻止するため為替介入を実施しましたが、介入の効果は一時的というのが専門家の間では常識となっており、抜本的な円安対策にはなりません。

金利を低くしても景気がよくならず、円安による物価上昇の悪影響が大きくなっているのであれば、日本も量的緩和策をやめ、金利を上げればよいということになるのですが、政府・日銀にはそう簡単に決断できない理由があります。

ひとつは政治的なもので、「量的緩和策=アベノミクス」ですから、これをやめて金利を引き上げるということは、アベノミクスがうまくいかなったことを認めることになってしまいます。自民党内の一部からは、政策転換を強くけん制する声が上がっていたことから、日銀は簡単には金利を上げることができませんでした。

 
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