ところが、永田町で裏金問題が急浮上したことから、自民党内は経済政策どころではなくなり、アベノミクス終了の是非について声高に意見を言う人が激減。日銀にとっては金利を引き上げる政治的ハードルが大きく下がりました。問題はもうひとつの経済的な理由です。
日本は長く低金利を続けてしまった結果、企業も個人も政府もその状態に強く依存する状況となっています。
企業が銀行からお金を借りた場合、元本に加えて利子も返済しなければなりません。金利が低ければ利子も少額で済みますが、金利を上げると利払い額が増加し、業績が悪い企業の場合、利子の支払いで利益のすべてが吹き飛んでしまいます。
個人も同じで、借金のある人は金利が上がると生活が苦しくなります。個人の借金でもっとも金額が大きいのは住宅ローンですが、変動金利で借りている人は金利上昇に伴って返済額が増えてしまいます。
日本国内でもっとも大きな額の借金をしているのは日本政府で、その総額は1000兆円を超えています。今はゼロ金利に近い状況ですから、利払い額もごくわずかで済んでいますが、もし平均金利が2%に上昇した場合、政府の利払い額は最終的に年間20兆円に達します。
岸田政権は年間5兆円だった防衛費を2倍の10兆円に増やすことを決断しましたが、支出を5兆円増やすだけでも、財源をめぐって国内では大騒ぎとなりました。金利が上がると、ここからさらに20兆円の追加支出が必要になるということですから、これは気の遠くなるような話といえるでしょう(国債は国民にとっての資産だ! と声高に主張している人がいますが、そうだからこそ大問題なのです。国債が国民の資産である以上、金利が上がれば、その分だけきちんと利子を支払わなければなりません)。
これまでは金利引き上げの影響が大きいことから、多少の円安は容認するというのが政府の考え方だったと思われますが、ここまでくると円安を放置することもリスクとなってしまいます。多くの困難を覚悟して利上げを実施するのか、それとも円安が進むことを我慢するのか、そろそろ決断する時期が迫っているようです。
前回記事「年金をもらいながら働くと年金が減額される「在職老齢年金」とは?制度見直しで再燃する深刻な財政問題」はこちら>>
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