俳優、シンガーソングライター、ダンサーなど、マルチに活躍する坂口涼太郎さん。先日、ミモレでエッセイ連載「今日も、ちゃ舞台の上で踊る」がスタート。また、歌人を名乗って「涼短歌」としてSNSで短歌を披露し、「NHK短歌」にも出演。今回はそんな坂口さんに、短歌の面白さや、涼短歌が生まれた背景についてお話を伺います。(聞き手:ヒオカ)
坂口涼太郎/1990年8月15日生まれ。兵庫県出身。特技はピアノ弾き語り、ダンス(ジャズ、バレエ、コンテンポラリー、ヒップホップ)、英語(特に発音)、短歌。朝の連続テレビ小説「なつぞら」「エール」「おちょやん」「らんまん」(NHK)、映画「ちはやふる」シリーズ、ドラマ「罠の戦争」(カンテレ)、「18/40〜ふたりなら夢も恋も〜」(TBS)など話題作に多数出演。現在、ドラマ「ACMA:GAME アクマゲーム」(日本テレビ)に出演中。俳優のほか、ダンサー、シンガーソングライターとしても活動。独創的なファッションやメイクが話題を呼ぶ。
X(Twitter):@RyotaroSakaguTw Instagram:@ryotarosakaguchi YouTube:@gucchi815
ある一冊の歌集との衝撃的な出会い
ーー書き溜められた「涼短歌」を拝読しましたが、本当にすごい数ですね。短歌を始めたきっかけは何だったのでしょうか?
坂口涼太郎さん(以下、坂口):笹井宏之さんの『えーえんとくちから』(笹井宏之、筑摩書房)という歌集を読んだことがきっかけです。著者の笹井宏之さんという方は、身体表現性障害を患い、療養生活をされて、26歳でこの世を旅立ってしまった方なんですけど、本当にもう世界中を旅しているかのような歌がたくさんあるんです。
笹井さんの歌を読んでいると、自分の住んでいる半径数メートルぐらいの範囲の中で、どれだけ面白いことが起こっているのかっていうことを考えさせられるんです。ここが宇宙みたいに広いのかもしれないと思えてくる。
今住んでいる家の中のちょっとした変化とか、日の入り方とか、影の作られ方……。食事もそうですよね、料理したりとか、冷蔵庫に入っている野菜がどんどん朽ちていくとか、そういう様みたいなことが、世界の全てなんじゃないかって思わせてくれるような歌がたくさんあるんです。
これを読んだときに、書店でガーンッてなりました。「宇宙……」って思って。この本を読んで、自分でも短歌を作ってみようって思ったんです。
ねむれないよるのうつわにそそがれるこの星雲のお茶のかがやき
— 坂口涼太郎 (@RyotaroSakaguTw) January 3, 2023
🍵#涼短歌 pic.twitter.com/zYqX5i0eNH
小さな視点から、無限に世界が広がる
ーー坂口さんの短歌を読んでいると、宇宙を感じるんですよね。宇宙の煌めきだったり、風景を切り取っているのが伝わってきます。
坂口:『えーえんとくちから』に出会ったのがきっかけっていうのがあるのかもしれない。日常のミクロが、マクロになる。本当に針の穴ぐらいのことを自分は言っているつもりなんだけど、読んでいる人はそこからいろんな風景を思い浮かべてくれるし、自分の経験として読んでくれる。それが短歌の面白さかなと思います。
ーー短歌って短い言葉だからこそ、読み手の感受性に任せる部分が大きいじゃないですか。読み手の想像力があって、独自の解釈をしてはじめて短歌が完成するみたいなところがあるのかもしれませんね。短歌は、テキストなどを読まずに、独学で作り始めたんですか?
坂口:そうですね。僕がやっているのは現代短歌っていう、口語、つまり今話している言葉で、5・7・5・7・7で全体としては31文字におさめるっていうやり方です。だからもう、こうやって喋っている言葉が短歌になってしまうこともあるんですよね。
Comment