何を伝え、何を伝えないのか? 短歌がくれる視点


ーー涼短歌の「せっかくの一回やから天国も地獄も行ったほうが得やん」という歌が、まさにしゃべってるそのままのようですよね。


坂口:僕の口癖そのままです。5・7・5・7・7になっていて、短歌じゃん! ってなったんです。こういう、口癖がそのまま歌になることが起こりうるんです。

ーーもう一冊、短歌をつくる上で影響を受けた本があるそうですね。

坂口:現代短歌を代表するひとりである穂村弘さんが書かれている『はじめての短歌』(河出書房新社)っていう本があるんです。これは短歌の本でもあるんですけれど、普段のこうやって誰かとコミュニケーションをとるときの言葉の選び方とか、自分の気持ちを言い表すときにどういう言葉を選んで、どうやって人に渡せばいいのかっていうことについても書かれていて。

「自分の半径数メートルでこんなにも面白いことが起こってる」日常から宇宙を感じとる、短歌の魅力とは【坂口涼太郎】_img0
『はじめての短歌』 穂村弘 河出書房新社

自分の気持ちとかを5・7・5・7・7っていう31文字にまとめるっていうことは、いろんなことを捨てていかなきゃいけないんですね。この本を読んで、短歌は何を伝えて何を伝えないかっていう取捨選択をする訓練にはなるんじゃないかなって感じました。
 

 


口に出したくなる言葉を集める


ーー坂口さんの初めてのエッセイ連載が「今日も、ちゃ舞台の上で踊る」っていうタイトルなんですけど、「ちゃぶ台」と「舞台」がかかっているんですよね。

坂口:そういう言葉遊びは短歌から学びましたね。ちょっとラップとかにも近いかもしれないんだけど、読んでいてリズムがいいとか、口に出して気持ちがいいもの、同じ音なのに全然意味が違うとか、そういう言葉選びとかダジャレみたいなものの面白さ。そういう視点は短歌を詠む中で生まれました。

ーー坂口さんの文章を読んでいると本当に語感がいいんですよ。すごくリズミカルというか、テンポがいい。エッセイは初めてだそうですが、初めてという感じが全くしなくて。短文で鍛えて基礎体力があるから、長文がすごくお上手なのかもしれませんね。

坂口:僕は、自分が声に出して読みたくなるリズムの文章が好きなのかもしれない。読書しているときも、実際につぶやくこともあるから、そこで乗っていける文体が好き。そのリズムで書いているんだろうなと思います。