すれ違う夫婦


基が探している代理母は、サロゲートマザー。つまり、代理母の卵子と基の精子で子どもを産むということです。それを聞いた悠子は当然、困惑します。それに対し、基はどうせ代理母なんて見つからない、だから登録をしただけだよ、と言うのです。でも、本当は基は探す気満々。悠子は、基が自分の遺伝子を残したいと思っていることも、基が千味子から、子どもを産めない悠子と別れて子どもを産める人と再婚しろと言われていることも知っている。子どもを産めない悠子は、代理母を使ってでも、子どもさえできれば基と別れずに済む。基が子どもを欲しいと言うなら断れないこの状況で、「嫌ならやめてもいいんだよ」と言う基は本当にズルいと思います。

代理母は「人助け」か?話題作『燕は戻ってこない』が描く、貧困女性の生殖能力・自由とお金のトレードが突きつける現実_img0
©NHK

自分がもし悠子の立場だったらどうでしょう。愛する人と、全く知らない女性の遺伝子で子どもが生まれてくる。自分の遺伝子が入らない子どもを、夫も義母も望んでいる。でも、子どもができなければ、基と離婚することになるかもしれない。悠子にとって基は人生のすべて。基を失うわけにはいかない悠子は追い詰められていきます。
 

 


そして、草桶夫婦のもとに、プランテから代理母の候補が見つかったと連絡が。悠子の悩みは深まるばかりですが、そんな悠子を尻目に、基は候補が見つかったことに大喜び。夫婦の温度差は広がるばかりです。

理紀と草桶夫婦の代理母の契約に向けた面談が行われますが、基だけが前のめり。基は、50歳になる前に子どもを作れば、子どもの成人を見届けられる、だから一刻を争う、と理紀に訴えます。「腹の底から金と安心が欲しい」と願う理紀は、子宮を差し出す代わりにお金をもらう、と代理母になることを決意。契約を交わすことが決まります。

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間に合えなかった人


このドラマで描くことの一つが、妊娠・出産におけるタイムリミット。

理紀は、悠子を見て、心の中でこう呟きます。
「あ、そうか、この人も“間に合えなかった人”なんだ」

プランテのスタッフ・青沼(朴璐美)は、理紀にこう言います。

「一度ぐらい女性として生まれてよかったって思ってみませんか」
「女にはいつだってタイムリミットがあるのにね」
「サロゲートマザーになれるのも、20代まで。タイムリミット、最後のビッグチャンス」
「これは女だけが果たせる、究極の“人助け”なんですよ」

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