女性の体は商品なのか


理紀が差し出すのは子宮だけではありません。理紀との契約が決まると、基は意気揚々と、理紀に伝える妊娠中の禁止事項を考えます。大金を受け取る代わりに、理紀は大きく自由を拘束されるのです。

代理母は「人助け」か?話題作『燕は戻ってこない』が描く、貧困女性の生殖能力・自由とお金のトレードが突きつける現実_img0
©NHK

千味子は、理紀を自らのスタジオの一角に住まわせ、食事の管理もすると言い出します。そんな親子の様子を見た悠子は、「人を商品みたいに言わないで」苦言を呈しますが、それに対して千味子は言うのです。

「だって商品でしょう。お金出して買うんだから」

理紀はいよいよ人工授精に進みますが、うまくいかず、より体に負担のかかるステップに進み、精神的にも肉体的にも大きな負担を抱えることに。5話の予告では、理紀が契約の禁止事項である「飛行機に乗らないこと」をさっそく破り、女性向け風俗のセラピストと関係を結ぶなど、危険な行動に出る模様。
 

 


どうしても子どもが欲しい家族と、貧困ゆえに体を売る女性。それぞれの思惑が交錯し、さらに混迷を極めていきそうなストーリーに、今後も目が離せません。

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©NHK
 


『燕は戻ってこない』 放送中
NHK総合 毎週火曜 よる10時

「命」はだれのもの?代理出産を巡る女たち男たちの欲望のドラマ!
吉川英治文学賞・毎日芸術賞をW受賞した桐野夏生作品をドラマ化。連続テレビ小説「らんまん」の長田育恵が脚本、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」のEvan Callが音楽を担当。

派遣社員として暮らす理紀(石橋静河)は悩んでいる。職場の同僚から「卵子提供」をして金を稼ごうと誘われたのだ。生殖医療エージェント「プランテ」で面談を受けるリキ。そこで持ち掛けられたのは「卵子提供」ではなく「代理出産」だった。元バレエダンサーの草桶基(稲垣吾郎)とその妻、悠子(内田有紀)が、高額の謝礼と引き換えに二人の子を産んでくれる「代理母」を探していた―。

制作統括:清水拓哉 磯智明/プロデューサー:板垣麻衣子 大越大士/演出:田中健二 山戸結希 北野隆


文・構成/ヒオカ
 
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