婦人科通いは絶対にバレたくない…その恐ろしい理由
麻衣さんは育休を1年半ほどとりましたが、その間の夫は今思えば異常だったと言います。
「私が社会から離れ家庭に専念することで、完全に夫の手の内に入ってしまったんだと思います。平日の日中、外出をする際は逐一連絡を入れることを求められました。何時からどこの小児科にいく、次はどこの処方箋薬局にいく、スーパーにちょっと買い物……など、1日の行動はぜんぶ報告しないと夫の機嫌が悪くなる。
地域の赤ちゃんの集まりに参加するときなんかは頻繁にLINEが鳴り『写真を送って』と何度も言われ、初対面のママさんたちに頼んで集合写真を撮ってもらったり。私を変な人だと警戒した方もいたと思います」
当時を思い出したのか、麻衣さんの表情は暗くなります。
また夫はiPhoneのGPS機能で麻衣さんの位置情報を日常的にチェックし、LINEの中身までは見られないまでも、iCloud上で着信履歴やメールのやりとりは把握されていたそうです。
「息子を寝かしつけるために近所をベビーカーで散歩しているときも、『1時間以上も外で何してるの?』『寝かしつけならベビーカーよりベビーベッドのほうが身体が楽だよ』とか電話がかかってきたり……。
もうプライバシーの侵害ですよね。でも逆らうと無言で不機嫌になるのが怖く、家の空気が悪くなるのがいたたまれなくて。前提として彼は家族想いで息子と私を心配しているだけだから、従っているほうが楽だと思っていました」
夫の束縛が続く中、麻衣さんは家に引きこもり、友人とも疎遠になりました。ただでさえ慣れない育児で余裕がない中、何か予定を入れれば夫への細かい報告業務が増える。ならば家でじっとしているほうが麻衣さんにとっては平和でした。
「誘いを断るうち、友人からの連絡も減りました。また、息子のお世話でよく家に来てくれていた私の母に対しても夫は嫌な顔をするようになりました。『お義母さんはだいぶ歳だし、世話を任せるのは危ない』『母親はあくまで麻衣ちゃんなんだから頼らないように』とか。
彼が不機嫌になるとストレスなので母と会う頻度や連絡を減らすようになり、一時は母とも少しギクシャクしました。でも夫は『麻衣ちゃんには僕がいるから大丈夫』『最近は物騒なことも多いから、家で安全に過ごすほうがいいよ』と、私が孤独になるほどご機嫌で優しくなるので、当時はそのほうが楽だったんです」
麻衣さんはますます外の世界から孤立していき、そして夫は出産直後の宣言通り、子作りを再開したがったのだそうです。
「この頃、基本的には夫の言うことにハイハイと従うスタンスでしたが、彼の性格に問題があることは心の奥ではわかっていました。だから……2人目の妊娠はどうにか避けたく、彼に内緒でピルを飲んでいました。少しでも保険診療にすると後からバレる可能性があるので、絶対に保険証を出さず、すべて自費診療の現金払いでしばらく通っていました。
婦人科にいる間は位置情報がバレないよう近くのスーパーに車を停めて、iPhoneを置いて診察したり。薬もピルだとわからないように、家に持ち込む前にすべてピルケースに移し、袋やレシートはコンビニで捨てたりして……夫にバレるのが怖くて常にヒヤヒヤしていましたが、妊娠は絶対にしたくなかった」
やっぱり私たち異常ですよね、と、麻衣さんは力なく微笑みます。
物静かで控えめな印象の彼女が、そこまで気を回さなければならず、神経を使う生活。このエピソードだけでも、麻衣さんがどれほど夫の監視下で怯えた生活を送っていたかよくわかります。
そして必然的に、異様な夫の束縛行動は息子さんにも影響しはじめたのです。
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