結婚記念日に不倫相手を優先。やっぱり客観的に見て、夫としてひどいんですよ


誤解を恐れず言うならば、岡田さんが演じる二也は、ある意味では「最高の夫」です。不規則な時間で働く妻一子を常に気遣い、家事全般を一子以上にひきうけ、美味しいコーヒーを入れてくれ、仕事よりも一子との私生活を大事にし、なにか問題が持ち上がればきちんと話しあえるし、一子と不仲の義母を一子以上に気遣っています。その上、イケメンで趣味もよく、礼儀正しく物腰も柔らか。ところが。

岡田将生さん(以下、岡田):現場に原作の先生がいらしたとき、最初に「岡田さん、なんでこの役引き受けたんですか?」と聞かれて、「え?」ってなったんですよ。僕はすごくいい役だと思っていたんだけど、「いや、二也は……」って。確かにダメな部分もたくさんあるけれど、それをちゃんと受け止めて、一子に言葉として伝えているところが素敵だし、他者を許すことのできる人、すごく優しい人間だと思うんです。全てのシーンを監督と「これはダメですよね」「これは良くなかったですね」と話しながら作っていったのですが、やっぱり客観的に見て二也のやっていることってひどいんですよ。でもそういうきちんとできないダメなところが、僕は割と好きなんですよね。

岡田将生「妻に不倫の現場を見られたような罪悪感が」二人の会話でさがす夫婦の理想像とは_img0
 


ちなみに岡田さんが思う「二也の最もダメな行動」を尋ねると、一子と旅行に行く予定だった結婚記念日に、公認不倫の相手・美月との約束を入れようとしたこと、とのこと。

岡田:二人の間で婚外恋愛のルールを設けているのに、なぜそれを破って結婚記念日に不倫相手を優先しようとしたのか。それは僕の中でも結構疑問で。全話通してお芝居していると、やっぱり二也は一子のことがものすごく好きなんですよね。人としても尊敬しているし、「一緒にいたい」と思っている、なのになんで、と。

でも、カチンと来た一子に「約束が違う」と指摘されれば、すぐに認めて素直に謝るのが二也のいいところーーなのでしょうが、すぐに認めて謝るくらいなら……と、その悪気のなさに微妙にイラッとくるような。二也に贔屓目の岡田さんは答えます。

岡田:そっか、そういうのもあるのか……難しいですね。

妻である一子と、婚外恋愛の相手・美月。それぞれの女性と過ごすときの二也の心境を、岡田さんはこんなふうに語ります。

岡田:とても失礼なことかもしれないんですが、僕の中では基本的に違いがなかったというか。二也にとってはどちらも好きな人だし、たぶんどちらも大切にしたいという。そこは夫としての二也のダメな部分で、それを見せるには両方を公平に好きであるべきだ、というふうに捉えてやっていました。でも撮影するたびにこの距離感が微妙に変わってしまうというか、美月に思いが傾いてしまう瞬間があったんです。そうでなければ結婚記念日に妻以外の女性を選んだりはしない。指摘されればすぐに認めるのも二也の良さだとは思うんですけれど、同時に一子に対する甘えでもあるんですよね。

 

これがもし「一般的な不倫もの」だったら、美月に傾いた二也はどんどん彼女に入れ込んでゆきそうですが、二也がユニークなのは(それはある意味、二也の欠落した部分にも思えるのは)、美月との関係の根本ーー一子との夫婦関係を維持するための関係であることーーが、決して揺らがないところ。一子に共感する多くの女性が美月の気持ちも解ってしまうのは、彼女らの二也に対するいらだちがほとんど同じだからかもしれません。かくて二人の女性はそれぞれにある種の「暴発」を起こすことに。二也はまずは美月による、これまでどんなドラマでも観たことがない、笑っていいのか笑っちゃいけないのか、とにかく衝撃的な修羅場を経験することになります。