翻って『虎に翼』の優三さんはというと、男女が逆転しているだけで、かなり「日曜劇場の妻」に近い。猪突猛進する妻を時になだめつつ、味方となって背中を押す。要は、ケア要員です。
好きな人の力になりたい、という気持ちはごく自然のことです。パートナーの幸せが自分の幸せ、という価値観も何ら否定されるものではありません。だから、優三さん自身の生き方や考え方に反発したいとか、そういうことではないのです。
ただ、妻のサポート役に徹する優三さんを理想の夫としてキャッキャするのであれば、同じように「日曜劇場の妻」に代表される、ケア要員として描かれることの多い男性主人公のドラマにおける妻の姿も認めるべきであり、そこに対して「日曜劇場の妻」にずっとモヤモヤしていた自分がノッキングを起こしているのです。
カップルは、前衛・後衛が当たり前?
たぶん僕は、「片方が、もう片方のケアのために存在する」みたいなパートナーシップがあんまり得意ではないのです。「日曜劇場の妻」や優三さんが、パートナーのケアのためだけに存在していたとは言いませんが、その役割を大きく背負っていたのは確か。もちろん本人が好んでやっていることなら、それでいいという話です。
何より2人という最小コミュニティを運営するにあたって、どちらかが前衛、どちらかが後衛にまわった方が自然と言われたら、それまで。RPGも同じです。アタッカーばかりでは、どんなに火力が高くても戦闘のバランスが悪い。アタッカーがいて、ヒーラーがいて、初めてコンビネーションが生まれる。男と女が自分に向いている役割を自分の意思で選べているなら、外野がケチをつける正当性はありません。
そこまでわかっている上で、なぜでしょう、まだモヤモヤが拭えない。男女の性役割について問いかけてきた『虎に翼』だからこそ、もうちょっと別のパートナーシップの形が見たかった、というのが本音なんだなと思います。
特に、昔のように男が稼いで女が家庭を守るというスタイルが成立していた時代ならさておき、現代は共働きカップルが当たり前。どちらかがアタッカーで、どちらかがヒーラーではなく、どちらもアタッカーでありヒーラー。にもかかわらず、主に女性ばかりケア要員としての役割を押しつけられるから歪みが生まれるわけで。そんな時代を生きる私たちが観るドラマとして、『虎に翼』の描くパートナーシップに期待していたところがありました。
それが、男女が逆転しているだけで、昔からよくある前衛・後衛スタイルだったことに、ちょっぴり残念感を覚えているのかもしれません。
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