――佐藤愛子さんのようなズバズバと何でも言うキャラクターって、言いたいことがなかなか言えない令和の世からすると、なんだか羨ましくも感じました。
代わりに言ってくれてありがとうみたいな心地よさがありますよね。やっぱり作家でいらっしゃるから、語彙力もあるし、言葉に説得力がある。歯に衣着せぬ物言いなんですけど、人を責めすぎず、でも言いたいことはちゃんと言う、そのバランスが絶妙だなと思いました。
高齢化社会と言われて久しいですが、こうしたニュースってつい重く受け止めがち。でも大正から昭和、平成、令和と4つの時代を生き抜いてきた精神って、やっぱりすごいです。みんなが生きやすい社会をつくろうと思っていろいろ決めたことがこんなにも生きづらくなってきた令和で、私たちはどう生きればいいのか。佐藤愛子さんの生き方からヒントを教わった気がします。
――今回、真矢さんは佐藤愛子さんの娘役を演じました。実際、あんな歯に衣着せぬ人がお母様だったらどうですか。
ここまでの語彙力はないですが、うちの母も結構似てるんですよ(笑)。私は幼い頃から母の言うことをわりと「うんうん」と聞いてる人だったんですけど、あるとき、自分の意見を言ってみようと思って、「私はそうは思わない」と言ってみたんですね。そしたら、「いつからそんなふうに言うようになったんだろう。家を出て食べる物が違うようになったからか」なんてわけのわからないことを言い出して(笑)。
あれは亡くなる3年くらい前だったかな。すごく悲しそうに「あの焼け野原をここまでしたのは私たちの世代なのに」とこぼしたことがあって。それを言われちゃあな、と娘としては思ってしまいましたけど。やっぱり母にしても、佐藤愛子さんにしても、戦争をくぐり抜けてきた世代の強さには揺るぎないものがあると言いますか、そんな方々の放つ言葉は、どの世代も鼓舞されるものがあると思います。
母から受け継いだDNAは愛しい以外の何物でもない
――お母様から影響を受けていると感じるところはありますか。
年々似てくるんですよね。街を歩いていて、ガラスに映った自分を見て、母に似てるなってびっくりしたり。思わず「うわーやだなぁ……」となっちゃいますよね。親には悪いですけど(笑)。
――似てくることにゾッとすることもあれば、いとおしさを感じることもあったり。
母は優しくて、さっぱりした人。自分で自分のことを優しいとは言えないですけど、さっぱりしてるところはよく似ていると思います。若い頃は母しか手本がないから、必然的に似ちゃうんですけど、社会に出て、いろんな人たちと出会うにつれて、母と似ている部分が嫌で、わざと変えようとしたこともありました。
それが一回り二回り年を重ねて、また母に近づいてるみたいな感覚はあります。たぶん似ることに抗わなくなったのかな。あのDNAが自分にも打ち込まれてるよね、と納得することのほうが増えました。
――素敵ですね。
うちの母の料理は、何をつくるにしても具材が大きかったんですよ。他のおうちは、お味噌汁もカレーライスも具が細かくて美しいのに、うちはゴロゴロとしていて繊細さに欠けるなと恥ずかしく思った時期もありました。でも今はやっぱり自分も大きく切りますもんね(笑)。細かすぎると食べごたえがないと思っちゃう。
私も還暦を過ぎて、親も見送って。そうなると、このDNAは愛しい以外の何物でもないですね。
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