親子の関係は親の老いと共にひっくり返るところがある

真矢ミキ「親子の関係は親の老いと共にひっくり返るところがある」ひとりの娘として思うこと_img0

 

――ミモレ世代は、まさに親の老いや死別というものに直面する時期です。真矢さんは2018年にお母様を見送られました。誰かの娘じゃなくなる、という感覚について聞かせていただけますか。

親と子の問題ってそれぞれ個人差があるので、一概にこうというのは言えません。だから、あくまでこれは私の一例として聞いてほしいのですが、私の場合、娘じゃなくなったというのは亡くなったときに感じるんじゃなくて、親が老いていくにつれてだんだん関係がひっくり返るようなところがありました。

去年までできていたことが、少しずつできなくなる。最初はそれを歯がゆく感じたりもして、気合いでどうにかさせようとしたことも。今でも覚えているのが、どんどん弱気になっていく母を元気づけたくて、犬でも飼おうかと提案したんです。そしたら、母が「犬育ててる場合じゃないわよ、こっちが死にそうなのに(笑)」と言って。私も若かったんでしょうね。その言葉を当時は真剣に捉えられていませんでした。
 

 


――わかる気がします。

親が年をとっていくことと子どもの気持ちって、最初はうまく噛み合わないものなんです。親にしっかりしてほしくて、ちょっと強い言葉で発破をかけてしまったり。そんなズレからぶつかり合うこともありました。けど今となっては、そうやって一生懸命頑張ってくれる娘が母親からは可愛く見えているんじゃないかという気がします。

真矢ミキ「親子の関係は親の老いと共にひっくり返るところがある」ひとりの娘として思うこと_img1

 

――衰えていく親の状態に合わせて、接し方も変わっていくような。

親の気力や体力が弱まるほどに、逆に子どものほうに「親を守りたい」という母性とか父性のようなものが芽生えてくるんですよね。

30代の頃なんて親から旅行に誘われても、友達と行きたいんだけどなと思っていました。それが40代になった頃から今のうちに親孝行でもしておこうかと自分から親を旅行に誘うようになり。なんならこっちがお金を出してあげようかとか一丁前なことを考えたりね(笑)。50代になると、だんだん親のほうの腰が重くなって、あんまり行きたがらないようになって。その分、子どもにいたわりの気持ちが生まれてくる。

変わっていく親を見て、辛い気持ちになることもあります。でもね、そんなふうに心の襞に染み入るような経験をするのも、人生における一つの大切な季節なんじゃないかと思うんです。だから、あんまり重く捉えすぎず、なるほど、もうこういうのはダメなのねと柔軟に受け入れていくといいんじゃないでしょうか。