思い込みはあっさり崩れた


しかし、何が起きるかはわからないのが人生です。里美さんがすっかり「生涯独身モード」で日々をマイペースに暮らしていた41歳のとき、仕事で出会った智樹さんと恋に落ちます。

智樹さんは8歳年上の広告デザイナー。人たらしと言っていいほどいつも仲間に囲まれている素敵な方で、里美さんは「こんな感じのひとが独身なんて信じられない。若い時には結婚していたというし、彼が離婚して独身の今、会えたことが奇跡!」と思い、猛アタックしたそう。

「30代の頃は、子どもが産めないとか、病歴が気になって仕方なくて、恋愛のことは考えないようにしていました。でも彼に出会ったら、そういうのはいったん置いておいて、すごく好きだなあと感じて。彼は昔の結婚でお子さんがいてもう大きいと聞いて、むしろ私が産めなくてもがっかりしないかもと思ってほっとしました。それでアプローチできたというのも本音です」

「そちら、誰?」50代で通勤中に脳梗塞で倒れた夫。目覚めたとき、再婚妻に放った衝撃の一言_img0
 

智樹さんも、里美さんのまっすぐな好意に応えてふたりはすぐに恋人になり、同棲を開始。大人同士、都会のカップルらしい日々を重ね、1年が経った頃に入籍しました。

「この人とこの先離れる人生というのが想像できなくて、結婚は自然な流れでした」と里美さん。

心が温かくなるお話で、当時の写真をたくさん見せていただき、しばしほっこりとしたムードで思い出話を伺います。

お子さんを持つことはないとわかっていたので、おふたりはお互いの趣味であるゴルフと映画鑑賞、ダイビング、旅行を一緒に楽しみ、結婚以来喧嘩はほとんどなかったとか。

里美さんのスマホの待ち受けは、ご夫妻でオーストラリアに行ったときの写真でした。結婚指輪は現在も当然、里美さんの指で光っています。

しかし取材の前にあらかじめ伺っていた、おふたりにこれから起こることを思い出すと、思わず言葉に詰まってしまいます。

智樹さんが脳梗塞で救急搬送されたのは、楽しみにしていた結婚記念日の直前のことでした。
 

 


突然倒れた夫。そのとき妻の行動は?


「仕事中、見慣れない番号から何度か着信がありました。嫌な予感がして、電話に出ると、救急病院からで夫が会社を出たところで失神して救急車で運ばれたと。息が止まりそうなショックでしたが、とにかく病院に飛んでいきました。

夫は意識不明、すぐに検査をしてもらえて、脳梗塞という診断がおり、手術を受けることに。家族として震える手で同意書にサインをしました。彼の親御さんはもういなかったので、私が彼の命に責任を持つ家族なのだと、痛感しました。途方もない心細さでした、あれは」

それまで大きな病気はなかったという智樹さん。しかし、里美さんには気になることがいくつかあったといいます。